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第4期科学技術基本計画の視点

No.349/2011年5月号
総合科学技術会議常勤議員 相澤益男
総合科学技術会議常勤議員 
相澤 益男
4月から科学技術基本計画の第4期が始まりますが、環境・エネルギーを対象とする「グリーンイノベーション」と、医療・介護・健康を対象とする「ライフイノベーション」が標榜されたところが、従来とは違いますね。
相澤:私たちが直面する大問題ですが、最初から「グリーンとライフイノベーションありき」ではありませんでした。
第3期では、基礎研究の重視とともに、日本にとって重要な分野を集中的に進める分野別重点方式がとられました。その結果、研究者は自分の専門分野を必死に追究し、研究開発としては多大な成果をあげました。しかし、世界が直面する課題にどう貢献するかには、なかなか繋がりません。
国費を投入するのですから、納税者である国民に納得してもらわねばなりません。国民の科学技術への期待は高く、中でも現代の抱える問題の解決をはかって欲しいという要求が強い。これに対して、もうひとつ説得力に欠けていました。
それを是正すると同時に、世界的な競争という時代の中で、1人当たり名目GDP順位がOECD内でこの10年下がり続けているなど、元気を無くしている日本の、「未来を切り拓くものは何か?」という問いかけの中から、2つのイノベーションが浮かび上がってきました。
環境・エネルギーという地球規模の問題、いずれ全人類が経験することになる高齢社会の問題の解決策を、日本が矜持をもって提案することができれば、大きな飛躍に繋がるでしょう。
現代の趨勢の中で2つのイノベーションが重要なことは分かりますが、研究者の自由な発想による基礎研究も、欠くことのできないものですね。
相澤:第4期では、基礎研究と人材育成を抜本的に強化します。昨年末、平成23年度の科学研究費補助金(科研費)を633億円増の2,633億円とすることが閣議決定されました。こうなると、第4期の計画に記される「科研費の新規採択率を30%まで引き上げる」という事項が、一挙に進む可能性があります。
第4期の答申で最も困難だったのは、第4期5年間の国費の投入目標を数値として定めることでした。これも官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上にし、うち政府の割合を1%以上にするという数字を挙げることができました。
GDPの名目成長率を2.8%とすると、政府の投資総額は約25兆円になります。これでも少ないという意見もあるでしょうが、他の予算が削られている状況下では重みがあると思います。現在は、官民の投資の割合は20%、80%ですから、政府の割合が少し増えることになります。
画:クロイワ カズ
科学技術コミュニケーションにも触れられていますが、研究者や研究機関はどう取り組んだらよいのでしょうか。
相澤:研究者や機関の顔が見える、face to faceの場をどんどん設けることでしょう。総合科学技術会議でも、いろいろな取り組みをしています。
トップ30人の研究者を選び、1人に15億から60億円のプロジェクトを任せるという「FIRST Program」をつくりましたが、これに関して高校生を主な対象とするシンポジウムを何回か開催してきました。研究者の話も非常に分かりやすく、会場とのやりとりも熱く盛り上がっていました。
若手や女性、地方在住者の研究支援を行う「最先端・次世代研究開発支援プログラム」では、日本学術振興会がまず採択者を絞り込み、総合科学技術会議が最終的に採択を決めました。総合科学技術会議では、各候補者に公募書類では1,000字となっていた研究要約を、ポイントだけ書き、半分に縮めるように求めました。そして、格段に分かりやすくなったものが出てきたのです。
研究者の意識が変われば、コミュニケーションは変わるという手応えを、しっかりと感じました。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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