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電気自動車を組み込んだスマートグリッド

No.352/2012年2月号
慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科准教授 西 宏章
慶應義塾大学理工学部
システムデザイン工学科准教授 
西 宏章
電気自動車(Electric Vehicle:EV)を活用したスマートグリッド(次世代電力網)の開発に取り組んでおられますが、どういうものですか。
西:長崎県五島列島の最大の島、福江島で実証実験に取り組んでいます。長崎港から90kmほど離れており、直径約20km(約324km 2)で、人口は約4万人ほどです。
EV、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)合わせて140台が導入されており、地元の業者がすべてをレンタカーとして、観光客を中心に貸し出しています。島内には急速充電器が4カ所設置されています。いわゆるスマートグリッドだけでなく、EVを含めITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の将来的なシステムをも構築していこうというプロジェクトです。「長崎EV&ITS」(長崎エビッツ)という名称は、国内よりもむしろ国外でよく知られていますね。
電力と交通という複合システムの中で、EVはどんな役割を担っているのですか。
西:車としての役割と蓄電池としての役割を、必要に応じて自在に演じさせるのが眼目です。電力が不足すれば、EVの蓄電池から電力を借り、余れば返すといった使い方です。EVならば、災害時等に電力が不足している地域に移動して電力を回すこともできます。IT技術を駆使して、これらを適切に行い、電力の送電量を平準化させることが目的の1つです。日本は離島が多く、一般に離島はエネルギー事情が厳しいため、高い導入メリットが期待できます。
今までにEVの配置や、利用状況、1回にどのくらい充電するかなどの実運用データが集まっており、これをもとに電力需給のシミュレーションを行ってきました。充電器を介して電力の貸し借りを行う装置のプロトタイプも出てきたので、今後はより精緻なシミュレーションができるようになるでしょう。
新しい機器やシステムの場合、とにかく実際に使ってみることが大事です。例えばEVにしても、現行の急速充電器は安全性を考えてがっちりつくってあるので、重いため、接続させるのが大変です。高齢者の場合は、大きな問題になるでしょうね。
画:クロイワ カズ
政府は、2020年のEV/PHEVの普及率の目標を最低でも20%という値を掲げていますが、そうなればこれらを組み込んだスマートグリッド、ITSというのは非常にダイナミックなものになりそうですね。
西:欧米ではすでに検討され始めていますが、EVを対象としたビジネスモデルも出てくるでしょうね。安い地域、時間帯に充電して(買う)、高い地域、時間帯に放電(売る)ということは容易に考えられ、これをオンタイムで適切に行うことができるITシステムも開発されるでしょう。 
蓄電池の開発が進んで、充電容量が上がれば、それこそいろいろなビジネスモデルがでてくるでしょう。現在のところ、蓄電池の重量当たりのエネルギー密度はガソリンと比べて2桁程度も小さいです。これが1桁かわれば、EVを巡る状況は劇的に変化するといわれています。
忘れてならないのは、スマートグリッドにしもてITSにしても、これからのネットワークシステムは地域密着型でなければならないことです。福江島での実証実験も、この地域の特徴の上に成り立ち、それを生かす方向で開発が進められています。
福江島は、電力の約20%を風力発電でまかなう自然エネルギー利用の最先端の地です。また、風光明媚で海産物も豊富です。そして、隠れキリシタンが多かった所で、明治政府が宗教の自由を表明した後にさまざまな美しい教会が建てられました。これらをもとに、世界遺産の候補リストにも載っています。この福江の姿を保ったまま、インフラを整備し、観光地として豊かに発展させるためには、EVを導入したITS、スマートグリッドの構築が不可欠だったといえます。
土地、土地の特性や条件に合わせて、スマートグリッドや、ITSを開発していけば、日本は本当に豊かな国になると思います。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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