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都市鉱山の開発システム

No.354/2012年8月号
物質・材料研究機構 特命研究員 原田 幸明
物質・材料研究機構
特命研究員 
原田 幸明
4年前に、日本の都市鉱山の埋蔵量を発表された時には、非常に大きな反響がありましたね。
原田:家電など廃棄された工業製品には、金属を始めさまざまな資源が含まれているという「都市鉱山」の概念自体は、昔からありました。本当にどれだけ存在するのか計算してみたところ、インパクトのある結果が出たわけです。私が想像していたものよりも一桁多かった。例えば金では、日本の都市鉱山の蓄積量は6,800トンで、世界の埋蔵量の16%以上を占め、世界一です。銀も世界一で、銅・インジウムが世界第2位、白金・アンチモン・タンタルが世界第3位となりました。レアアースはあまり多くは存在しません。
大量に存在していても、有用資源として都市鉱山から効率よく採り出すことができなければ、意味がありません。新しいリサイクルのシステムが必要です。
リサイクル技術についても、携帯を対象に、装置を開発なさいましたね。
原田:装置自体はまだまだ改良の余地がありますが、鉱山の資源開発という視点からリサイクル技術・システムを見直したところに意味があるでしょう。
金の場合、鉱石1トンの中に1グラムくらいしか入っていない。これを効率的に採るためには、鉱石の中の不純物をできるだけ取り除き、分離濃縮をはかる「精鉱」という過程が不可欠です。携帯でも、トレッドミルを使って砕いて、有用な部分とそうでない部分を目で見て簡単に分離できる装置を開発してみたのです。
従来、リサイクルでは、既存技術を流用してシステムに取り込むものと考えられてきましたが、それぞれのリサイクルに合った技術を開発すべきで、それを研究室レベルで示したともいえます。
そのように技術開発していけば、日本の都市鉱山開発は順調に進むのですか。
原田:技術開発と社会システムが微妙に絡みあっていて、簡単にはいかないのがリサイクルです。日本の大きな問題は、ハイテクの製造者たちがリサイクルの主体になっていないことです。へたにリサイクルするより、海外から買ってきたほうが安くて早いという現実があります。
現状では、携帯などハイテク製品から回収した銅もローテクの銅線にはできるが、ハイテクで使われる高純度銅の薄板にすることができない。ハイテク機器からハイテク機器にリサイクルできるような方法を考えなければなりません。メタルを高度に精製された化学物質の1つとして捉えるようなリサイクルで、私たちはこれを「ファインケミカルリサイクル」と呼んでいます。
単に都市鉱山から資源を回収するだけなら、中国などそういうものを本当に必要としているところに製品を集めてリサイクルしたほうが効率的です。日本でやるからには、ハイテクに使える形で取り出さねば意味がありません。
画:クロイワ カズ
そのためには、どうしたらよいのでしょうか。
原田:天然の鉱物には成分のパターンがあります。鉱山技術なども、それに合わせて開発されてきました。一方、人工物の場合は、パターンがより複雑になります。ハイテクともなるとさらに複雑さが増します。これに合わせたリサイクル技術をどう開発するか? じつは、そのパターンをいちばんよく知っているのは、その製品をつくった人たちです。先ほど、製造者がリサイクルの主体になっていないといいましたが、これを劇的に変える仕組みをつくるのも1つの方法です。
一例として、コピー機があります。オフィスのコピー機の基本はリースで、各メーカーとも、リサイクル技術・システムは非常に進んでおり、ほとんどのものが再生されます。リースという形態の中で、"つくる"と"リサイクルする"が一体化し、高度な技術システム・社会システムをつくり上げているのです。携帯などのハイテク機器にも、このシステムを導入することはできるでしょう。これからの時代は、製品を買って消費するのではなく、製品をリースして再生するという時代になるかもしれません。これを私たちは「マテリアル・リース」と呼び、その研究にも取り組んでいます。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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