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2027年、超電導リニアモーターカー開業

No.357/2013年5月号
東海旅客鉄道株式会社 専務執行役員 中央新幹線推進本部 リニア開発本部長 白國 紀行
東海旅客鉄道株式会社 専務執行役員
中央新幹線推進本部 リニア開発本部長 
白國 紀行
超電導リニアモーターカーの路線計画がいよいよ実現に向けて動き出しましたね。
白國:東京-甲府付近-名古屋-奈良付近-大阪という中央新幹線の整備は、全国新幹線鉄道整備法に基づいています。2011年に整備計画路線となり、その建設・営業の主体にJR東海が指名されました。私たちはこれを超電導リニアモーターカーで実現しようというわけです。
現在、明確になっているのは、2027年に東京-名古屋間を開通することです。大阪までの開通目標は2045年です。名古屋までの建設開業に5.1兆円、大阪までだと9兆円かかると試算されています。一民間企業が行うので、まず名古屋までを実現して、多くのお客様に乗って頂いて経営体力を回復し、次いで大阪までということですね。
技術的な面はすでにクリアしたと伺っていますが、苦労した課題は何でしたか。
白國:文字通り超電導の部分です。超電導磁石の超電導状態を、いかに安定的に維持するかです。国鉄時代の1962年に超電導リニアモーターカーの開発がスタートし、宮崎実験線を使っての研究開発が進められましたが、この時の課題がまさにそれです。クエンチという超電導状態が維持できない状態が発生し、安定しないのです。
超電導磁石はいわば魔法瓶のようなものの中に入っており、液体窒素や液体ヘリウムで-269℃まで冷やしています。走行すると、どうしても振動が魔法瓶に生じます。振動のエネルギーは熱エネルギーに変わり、そのために液体窒素や液体ヘリウムが蒸発して、超電導磁石の温度が上昇するのです。温度が上がると超電導状態が維持できなくなってしまいます。振動を抑えることがポイントで、どうやったらよいのかをメーカーの方々といろいろ議論して、試行錯誤を繰り返しました。最終的に製品として形にするのはメーカーですが、日本のメーカーの力は非常に優れています。
1987年に国鉄からJRになり、1997年には山梨実験線を使っての走行試験が始まりましたが、この頃までには先のクエンチも克服し、営業運行の目標としている時速500kmはもちろんのこと、1割増しの時速550kmも安定して走行できるようになりました。2003年には時速581kmを達成しています。
一列車当たりに搭載する超電導磁石の数は(車両数+1)×2個です。また、従来の線路に相当するのはU字型のコンクリートの構造物で、ガイドウェーといいます。そこにはコイルを配置し、変電所から電気を送って電磁石にします。車両搭載の超電導磁石とガイドウェーの電磁石との間の引力と斥力によって浮上走行します。
周りの環境への影響はどのようなものなのでしょうか。
白國:今、環境影響の評価を行っているところです。騒音や振動などの沿線への影響については国の基準値があります。また、磁場についてはWHO(世界保健機関)が国際非電離放射線防護委員会での基準値の適用を勧告し、国もこれを基準値としていますが、国の基準を守る技術やノウハウは我々はすでに持っています。
コントロールや運行のシステムは、どのようなものになるのでしょうか。
白國:時速500kmの世界ですので運転士は乗せず、地上のコントロールセンターから走行指示を出すことになります。
また、ピーク時には1時間当たり片道1万人を運べるようにと考えています。例えば一列車で1,000人運べるとすると、1時間に10本ですね。現在、東海道新幹線では、朝夕の混む時間帯には、1,300人を乗せる16両の「のぞみ」だけでも1時間に最大10本走らせており、1日約40万人のお客様を運んでいます。
大量高速輸送システムである新幹線の半世紀にならんとする運行システムの蓄積が、超電導リニアモーターカーによる中央新幹線の営業運行の土台にしっかりあります。これはすばらしい財産で、中央新幹線は東海道新幹線を発展させた輸送システムだと私たちはとらえています。
画:クロイワ カズ

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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