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今後10年は関東を、20~30年は東海・東南海・南海を注視

No.358/2013年8月号
地震予知総合研究振興会理事 東京大学名誉教授 萩原 幸男
地震予知総合研究振興会理事
東京大学名誉教授 
萩原 幸男
地震予知総合研究振興会のミッションは何でしょうか。
萩原:1つは地震に関する研究のバックアップです。最近はこの分野の研究予算がかなり増えているので、知識の普及という面を強化しつつあります。もう1つは名称の通り、総合的に地震の研究を進めることを振興することです。
この振興会の創立者の萩原尊礼博士は、地震の予知・予測の研究には、主として地震のメカニズムを扱う地震学だけでなく、電磁気学、測地学、地質学、地震工学、私の専門である重力の研究など、さまざまな分野の研究を総合しなければならないと考えていました。まさにその通りです。
総合化の現状はいかがですか。
萩原:GPSを使った水平方向の地殻変動の測定は非常に進んでいます。測地学ですね。地震学と測地学の総合化はほぼ完成しており、測定データを使ってモデルをつくったり、どのようなことが実際に起こったのかを解析したりしています。地震工学との連携も進んでいます。
しかし、他の分野との総合化はまだまだで、予知・予測には至っていません。大きな地震の前にはおそらく何かあるだろうと思うのですが、まだ検出できていません。
やはり過去のデータからの長期的な予測が現在の主流なのでしょうか。
萩原:過去のデータがしっかりしていないと難しいのですが、津波堆積物などはまだよく調べられていないのが現状ですね。
東日本大震災の時も、2日前にM7程度の地震が起こっているのですが、これはおよそ30年に1回は起こるM7級の地震で、今回はこれで終わったと思ってしまった。これがさらに大きな地震の前震とは誰も考えなかったのです。
自然科学の現象には必ずカオス的な挙動が含まれるので、過去のデータが完璧だとしても将来を確実に予測することは統計だけでは困難です。
ただ、不完全であることを念頭に置きながら、今後30年をどうするかといった対策を講じる根拠にはなりえます。
そう見た時に、大きな地震が今後起きそうなのはどこでしょうか。
萩原:やはり東海・東南海・南海でしょう。過去を振り返ると、およそ100年に1度の割合で発生しています。
前回は1944年12月にM7.9の東南海地震が、2年後の1946年12月にM8.0の南海地震が起こっています。
その前が1854年の安政地震で、12月23日にM8.4と推定される東海・東南海地震が、32時間後にM8.4の南海地震が連動して起きています。さらにその前が、1707年10月28日のM8.6の宝永地震で、東海・東南海・南海が連動しています。この時は49日後に富士山も噴火しています。
前回から70年経っているので、今後30~40年の間におそらく起きるでしょう。前回の地震は規模が少し小さく、東海が抜けていたので、次回は3つの海域が連動する可能性は高いですね。富士山の噴火も念頭に置いておかねばならないでしょう。
富士山は、869年に三陸沖・宮城県沖・福島県沖で起きた貞観地震の5年前にも大噴火しています。
他に注意すべき地域はありますか。
萩原:M7.0くらいでしょうが、首都圏もここ10年くらいは、直下地震に気をつけなければなりません。
貞観地震の9年後の878年に相模・武蔵に直下地震が起きており、誘発地震の可能性が考えられています。東海・東南海・南海の安政地震の時は、1年後にM6.9の安政江戸地震が発生しています。また、1896年・97年に三陸沖中部・宮城県沖で連動して生じた明治三陸沖地震の時には、その2年前の1894年にM7の東京地震が発生していますね。
首都圏で必ず起きるとはいえませんが、起きる可能性は十分に考えられます。今回もちこたえたとしても、東海・東南海・南海地震の前後に起こる可能性も高いですね。いずれにしろ、社会としても、個人としても、備えと覚悟が必要です。
画:クロイワ カズ

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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