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研究を売る!

No.370/2016年8月号
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL) テクノロジープロモーションオフィス シニアジェネラルマネージャー 夏目 哲
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)
テクノロジープロモーションオフィス
シニアジェネラルマネージャー 
夏目 哲
 
ソニーCSLの研究成果を「売る」ことに携わってこられ、その経験を最近本にまとめられましたが、そもそも研究を売るという発想はどういうところから得られたのですか。
夏目:学部は理系でしたが、ソニーでは工場の生産管理など管理系の仕事をしていました。でも研究を何らかの形で社会に出すことには興味をもっていたので、15年前に新規事業立ち上げのプロジェクトに志願しました。これが私の「研究営業」事始めです。
360度ビデオカメラの実用化をはかるもので、ソニー内の各事業部はもちろん、TV局、映画会社、音楽会社などいろいろと回りました。しかし、上手くいかず、3年で終了となりました。この時強く感じたのは、技術の実用化にはタイミングが大事だということ。ご存じのように、今、360度動画は大流行で、15年前では早すぎたわけです。もうひとつ思ったのは、1つの技術だけで、実用化に向けての営業をするのは難しいということ。通常の営業では、いろいろな商品やサービスを並べて、売れるものを売っていく。研究成果もいくつかの品揃えをして、売れるものを売るのが良いのではないかと…。
そんなことを考えていたところ、ソニーCSLの創立者の所 眞理雄所長(現エグゼクティブ アドバイザー)から「研究営業」をやらないかと誘いがあり、テクノロジープロモーションオフィスを立ち上げました。10年前です。
どのような営業成果をあげてこられましたか。
夏目:最も思い入れのある売り込みの1つは、"ワンタッチ"という技術です。携帯とスピーカーを互いにワンタッチする(触れる)だけで機器認証ができて、つながってしまう技術で、すぐに携帯の音楽をスピーカーに流せます。暦本純一研究員(現副所長)が2002年くらいには完成させていた技術で、大々的に研究成果を発表しましたが、実用化に至らなかった。当時は部屋の中にそんなにつなぐものが無かったのです。でも、今後役に立つ技術だと確信して、ねばり強く営業を続けていたら、ソニーのある事業部で、これを国際規格にして、ソニー以外の製品もつながるようにするべきだといわれて、国際規格にもっていきました。そして、それからさらに5年たった2012年頃から、スピーカー、カメラ、携帯などソニーのあらゆる製品に搭載されるようになりました。時代が技術に追いついたのです。
画:クロイワ カズ
研究を売るコツはありますか。
夏目:あれば教えてほしいくらいですが、心がけているのは、「この成果は絶対売れるという信念をもつこと」と「実用化のチャンスを広げるために、最初はいろいろな成果を一度に紹介すること」です。
研究成果の紹介でよくあるのが、研究者が自分の成果を1時間かけて説明するといったものです。しかし、応用を担当する事業部の人たちは非常に忙しいので、1時間に1件では効率が悪すぎる。私の場合は、1時間もらえば20件は紹介します。どうしてそうなるかなど原理の説明はほとんどせず、これを使えば何ができるかに特化しています。プレゼンテーションも映像を使ったりして、なるべく分かりやすい形を心がけています。そして、国内外を問わず、こちらから出向いて説明するような場をつくることに心を砕いています。きっかけづくりが大事です。
売れるという信念をもつためにも、成果の品揃えをするためにも、研究者とのコミュニケーションが欠かせません。研究者と営業担当者が対等な関係を築き、忌憚なく意見を交わすことが非常に大事です。実用化へのきっかけができれば、研究者も参加して事を進め、商品化に至れば共に喜ぶ…、ステキな瞬間です。
「研究営業」の今後の展開をどう考えていらっしゃいますか。
夏目:ソニー全体、さらにはソニーを超えて「研究営業」という活動が広がっていけばと思っています。そして日本をはじめ、地球規模の研究マーケットというものができれば、それは素晴らしいですね。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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