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Green500の1位から見たコンピューター・ヘゲモニー

No.371/2016年11月号
PEZY Computing 代表取締役社長 齊藤 元章
PEZY Computing 代表取締役社長 
齊藤 元章
 
スーパーコンピューターの消費電力当たりの性能をランク付けするGreen500で、また世界1位を取られましたね。
齊藤:2016年6月発表のランキングで、私たちが開発したプロセッサーと独自液浸冷却技術を搭載した理化学研究所の「Shoubu(菖蒲)」が1位を、「Satsuki(皐月)」が2位を獲得しました。Green500は年2回ランキングを発表していますが、菖蒲は3期連続で世界1位に認定されました。また、皐月は研究室の3m 2のスペースに設置されており、TOP500にランキングされた世界初のオフィス設置のスパコンです。
我々のスパコンは、不活性液体を冷媒とし、これに電子基板や電源の全体を浸す「液浸冷却」を採っています。グループ会社のExaScalerが高沸点のフッ化炭素冷媒を用いた冷却システムを独自に開発しました。
今回のランキングの特徴は何ですか。
齊藤:何といっても中国の大躍進です。Green500の評価は、半年に1度発表されるTOP500に入っていることが前提です。これは処理速度の絶対性能のランク付けですが、6月発表のランキングでは中国の「神威太湖之光」がダントツの首位でした。6期連続で1位だった中国の「天河2号」の処理速度33.8PFLOPS(ペタフロプス)の3倍の93.0PFLOPSを誇り、インテル製のプロセッサーを使っていた天河2号とは違い、プロセッサーも接続回路も中国製です。
中国はTOP500に168台が入り、米国は165台に留まって史上初めて台数シェア1位の座を失いました。昨年の6月には中国よりも上位の2位であった日本は、40台から29台となり3位に後退しています。
じつは今回我々は、TOP500に十分に入るだろうという性能のものを6台申請したのですが、4台は入れずに、残った2台がGreen500の1位、2位を取ったわけです。3位は超高速の神威太湖之光で、その消費電力性能も2位に僅差で迫る勢いです。Green500の4位から13位の10台、上位25台中の21台が中国のスパコンでした。
画:クロイワ カズ
その原動力はヒト・カネ・モノを国家的につぎ込んでいるところにありますか。
齊藤:そのすべてに加えて、技術も含めて国家的に集中投下してきています。それも従来の単なる物量作戦ではなく、新しい局面に踏み込んでいる。神威太湖之光はハードウエアとして非常によくまとまっているし、ソフトウエアの面でも米欧日が目指してきた、コードの書きやすい使いやすいスパコンという概念を覆しています。非常に優秀なプログラマーがソフトウエアを書かないと使えない。
ここをどうクリアしたかというと、清華大学を含め4つの研究機関が連携して膨大な数のソフトウエア技術者を養成し、その上澄みの天才的な人材を束ねてソフトウエア開発を担当させている。素晴らしいハードと優秀な人材とのリンクの中で、どんどん天才的ソフトウエア技術者が生まれてくるというのも、我々にとって脅威です。
これに人工知能(AI)の開発が絡んで、科学技術分野全体で中国に圧倒的リードを許すという事態も大いに考えられます。表立って入手できる情報に限っても3年間に1兆8,000億円を人工知能分野に投資するという桁違いの構想です。
AIがどう絡んでくるのですか。
齊藤:ディープラーニングが話題になりAIの特徴点抽出、パターン分析の能力に注目が集まっています。じつは、人間が科学の仮説を立てるときも、自然現象の中にある特徴を抽出しパターン分析して立案しています。
それを実験や数式を使って検証する。卓越したAIができれば、自然科学の仮説を立てられるようになります。ただし、現状ではAIにいろいろさせるには、ノイズ除去やデータの正規化など膨大な前処理が必要で、人間が手間暇をかけてやっています。しかし、そんな処理こそAIが行えばいい。それにはAIのエンジンであるプロセッサー能力を100~1,000倍上げねばなりません。我々もそのための会社を立ち上げました。一方、仮説の検証を行うのはスパコンです。日本最速の「京」はTOP500の5位で10.5PFLOPSですが、次世代には100倍の1EFLOPS(エクサフロプス)レベルが必要です。
AIとスパコンを連携させるループを最初に回すことができた国が圧倒的に強くなるでしょう。それがどこになるのかが今、問われています。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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