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日本の科学技術外交をどう展開するか

No.375/2017年11月号
外務省外務大臣科学技術顧問 岸 輝雄
外務省外務大臣科学技術顧問
岸 輝雄
外務省の科学技術顧問に就任されて、どのくらいになりますか。
岸:約2年ですね。同じような役職は、米国、英国、ニュージーランドにはすでにあり、日本は4番目です。この1年でさらに増え、ポーランド、カナダ、セネガルにも置かれました。
今や、科学技術はあらゆる事物に入り込んでおり、根っこの部分になっていることも非常に多い。このことを日本の外務省は理解し、科学技術を外交の重要な要素の1つだと考え、こういう役職を置いたのだと思います。この分野では米英が先行していましたが、世界的にもそういう認識が出てきているのでしょうね。
この2年の間、具体的にはどのようなことをなさっていたのでしょうか。
岸:率直にいって、外務省の人たちは科学技術にはあまりなじみがありません。まず、その科学技術リテラシーを上げようと、科学技術の懇談会を昼休みに始めました。日本科学未来館館長で元宇宙飛行士の毛利衛さんや、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長で素粒子物理学者の村山斉さんなどをお呼びして、100人くらい入る講堂で行っています。サンドイッチ持参での参加ですが、なかなか盛況で、ほとんど満員です。
また、外務省の中に入って強く感じたのは、外務省の宝は在外公館だということです。そこで、これを利用して、日本の科学技術の発信をキャラバンスタイルでやっていこうと考えました。
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が立ち上げた「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の11のプロジェクトについて、外務省と内閣府が組んで、現地で有識者を集めて紹介するというものです。その実現には、在外公館の頑張りが必要不可欠です。すでに、ベルリン、ウィーン、パリ、ロンドン、ジャカルタ、バンコクで行っており、今後も続々と開きます。
在外公館については、科学技術アタッシェが少なすぎるという問題もあります。数を増やして機能も強化し、各国の科学技術に対する要望をどんどん汲み上げていくことができればと思っています。
G7、アフリカ国際会議(TICAD)をはじめとする国際会議での提案や、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成のために、外務省に有識者会議を立ち上げ、各科学技術分野の17名の権威に入ってもらいました。そして、分野ごとにスタディーグループをつくって、課題ごとに対応しています。
2016年に日本で開かれたG7のためにスタディーグループを半年動かし、並行してTICADのためにもスタディグループを稼働させました。現在はSDGsをどう進めていくかというスタディーグループを立ち上げています。例えばG7では、特に医療と海洋の領域で、正確なデータに基づいた科学技術政策をG7が協力して行おうという趣旨の提案を盛り込みました。SDGsは17のゴールと169のターゲットがあり、これに世界各国が取り組んでいるのですが、気候変動、感染症、ジェンダー、教育、水などありとあらゆる問題が取り込まれているので、その対応はなかなか大変です。
画:クロイワ カズ
他の国の科学技術顧問も同じような仕事をしているのでしょうか。
岸:役職名は同じでも、国によってありようはずいぶん違います。私の科学技術顧問としての仕事は公式には週1日ですが、英国では週3日、米国では週5日のフルタイムです。また、米国の場合、外務省だけでなく、大統領にも科学技術顧問がおり、科学技術外交に携わる人が政府内にかなりいます。一方で、科学アカデミーや、250の学会を束ねる米国科学振興協会(AAAS)などの科学技術の専門家集団も科学技術外交の一端を担っており、政府の内と外とのグループが、巧みなトライアングルをつくっています。ただ、英国外務省の科学技術顧問によれば、超大国の米国は手本にはならず、日独仏英あたりで話し合うのが一番有益だということです。
日本の科学技術外交の指針や体制をどうするかは、ここ数年が正念場でしょうね。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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