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巨大ハリケーンの目を見た話 - U.S.A. -

No.404/2011.08
石炭ビジネスユニット/ 末次 健二
画:クロイワ カズ

2003年9月、石炭の国際技術会議でピッツバーグに出張したときのこと。3日間の予定でしたが、2日目に超大型ハリケーン「イザベル」が米国東海岸を襲いました。このハリケーンはカテゴリー5で、風速70mを超える最大級。ニューヨークはじめ東海岸の主な空港はすべてクローズされ、日本に帰るルートがありません。幸いシカゴ空港はオープンとの情報があり、シカゴ経由で帰ることにしました。

午前4時、ホテルをチェックアウトしたものの外はものすごい風雨で、タクシー乗り場は既に長蛇の列。2時間近く待って漸く空港に向かいました。ピッツバーグの空港もたくさんの人でごった返しています。ボードには「CANCELED」の文字が並びます。7時間も待たされて、ようやくシカゴ便に乗り込みました。

大型機でしたが、離陸直後から大きく揺れます。満員の乗客からは大声の悲鳴。女性客の泣き声も聞こえます。

汗ビッショリの私はシートベルトをしっかり締め、前傾姿勢で眼を閉じて、じっと揺れに耐えていました。やがて成層圏に出たのか少し揺れが収まりました。腕時計を見ると未だ離陸から30分。窓の外を覗いてみました。眼下には灰色の雲が猛烈な勢いで渦を巻くように飛んでいきます。その渦の中心に眼が釘付けになりました。ポッカリと開いた、雲のない空洞の穴。そこから下界が見える!

初めて見る異様な光景。「これが台風の目か!」暫く息を殺して見つめていましたが、恐ろしいものを見てしまったような気がして、再び眼を閉じました。

その夜、東京行きのジャンボ機のシートに身を沈め、昼間の凄まじい光景を思い浮かべて、肝心なことを忘れたのに気付きました。写真を撮っておくべきだった!