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初めての上海蟹が幻の味だった話 - CHINA -

No.419/2012.11
機能品・ファインカンパニー/ 佐直 英治
画:クロイワ カズ

2009年の秋、化学品の製造委託先を同僚と2人で訪問しました。場所は江蘇省南部、長江デルタ地帯の中心部にある常州市。2,500年の歴史を誇る風光明媚な町ですが、近年はモデル工業都市として発展しています。

仕事も一段落。一夜、客先の招待で上海蟹を食べに行くことになりました。上海蟹の旬は秋。楽しみでした。

車で1時間近く走り、更に船に乗り換えて20分、提灯をたくさんつけた水上レストランに着きました。中では客先が既に着席していました。こちらは2人なのに先方は10人以上。早速、白酒(パイチュウ)で乾杯です。テーブルの料理は普通の中華。先ほど生簀から取り出したはずの上海蟹の姿はありません。お酒は弱いほうではないのですが、空きっ腹には効きます。杯を重ねるうちに意識が朦朧・・・ そして沈没—。

気がついたのは翌朝、ホテルのベッド。着の身着のままでした。同僚が運んでくれたようです。朝食で顔を合わせ、お礼を言うと、「大丈夫? 蟹味噌、旨かったね」と同僚。しかし、蟹を食べた記憶が全くない。「旨い旨いと食べてたよ」と同僚は言います。しかも、ズボンには蟹味噌の跡がクッキリ。それでも思い出せません。

その後、別件で上海に出張。今度はアルコール抜きで上海蟹をトライしました。季節はずれのためか、まずまずの味。あの時の「幻の上海蟹」はもっと美味しかったはずだ、と妄想が膨らみます。

先年、内蒙古への出張では、現地の人が白酒とヨーグルト飲料を交互に飲んでいました。胃の粘膜を保護し、アルコールの吸収を遅らせるといいます。これだ!

次の常州市訪問では先ずヨーグルトを注文しようと心に決めました。が、その機会は未だに訪れません。