MENU

スパニッシュ・ラーメンに郷愁を覚えた話 - SPAIN -

No.434/2014.02
機能品・ファインカンパニー/ 葛尾 繁
画:クロイワ カズ

2011年、トレーニーとして1年間スペインの東海岸、カステジョンの工場に勤務しました。ここから宿舎のあるベニカシムまでは素晴らしい観光地。赴任して暫くは海岸線の景色に見とれていましたが、やがて興味はグルメに移りました。

スペイン料理の食べ歩きにも飽き、東洋の味を求めて宿舎近くの中華レストランへ通うようになりました。でも、メニューはどれもスペイン風の味付けでイマイチ馴染めません。シェフが中国人だったので、ダメモトで「マーボードーフ」と頼んでみました。もちろんメニューにはありませんが、「シー・セニョール」と嬉しい返事。出てきたのはまさに麻婆豆腐。これに味を占めて、次の日には「チンジャオロウス」を頼むと、これも予想した味の青椒肉絲でした。他に中国語を知らないので当分はこの2つの繰り返しでした。そのうちに、日本のラーメンが恋しくなり、「ラーメン!」と注文してみたものの、返事は「??」。カタコトのスペイン語を駆使しても意は通じません。困ったときはジェスチャーが一番。箸で麺を摘まみあげ、それを口元に持っていってすする仕草を繰り返すと、何とか分かってくれたようです。

出てきたのはタンメンらしき一品。よくみると、インスタント麺に野菜炒めをトッピングし、それにスープをかけたような感じです。期待をこめて口にしました。お味は?

何とも表現しがたいものでしたが、雰囲気だけはまさにラーメン。息を吹きかけながらすすると、新橋辺りで食べるラーメンに似ていなくもない。少しは郷愁を感じさせます。その日以来、その店のスパニッシュ・ラーメンは私のお気に入りメニューにランクされるようになりました。