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名門オーケストラの演奏に感激した話 - CHINA -

No.440/2014.08
宇部興産機械(株)/ 栗林 宏明
画:クロイワ カズ

2年前の春、外注した機器の工程と品質管理のため、3ヵ月近く上海に滞在しました。昼間は現場に出て機器の製作を管理しますが、夜はやることがありません。

私は以前からクラシック音楽が趣味で、当時も宇部市民オーケストラでチェロの首席奏者を務めていました。滞在中に、是非とも上海交響楽団の演奏を生で聴きたいとチャンスを窺っていたところ、インターネットで近く公演があることを発見。早速チケットを申し込みましたが、完売とのこと。何とかしてほしいと、通訳をお願いしている呉さんに依頼しました。やはり土地の人は違います。直ぐにチケットを手配してくれました。

当日、人民公園の近くにある上海音楽庁(コンサートホール)に出かけました。荘重な建築ですが内部は千席余りで、あまり大きくはありません。実は、大学のオケ時代、1度上海の別のホールで演奏したことがあり、何だか懐かしく感じました。幕が開くと、指揮者の曹鵬氏が観客に向かって話しかけます。90歳近い中国音楽会の重鎮です。演目の紹介のようでした。指揮者に較べると楽団員は総じて若い。楽団の創設は19世紀に遡るので何度も世代交代があったのでしょう。演奏が始まりました。久し振りに聴く弦の響きに鳥肌が立ちます。メインはラフマニノフの交響曲第2番、大好きな曲です。曹鵬氏のタクトが次第にダイナミックな動きになり、団員たちがそれに惹きこまれていくのがよく分かります。素晴らしく情熱的な第3楽章に続いて凄い迫力の終楽章。最後は強烈な和音の連打。演奏が終わっても暫く席を立つことができないほどの感動でした。

外に出て風に当たると余韻が醒め空腹を覚えました。懐具合を考えて、近くの「吉野家」へ。名演奏の影響からか、とても美味しい牛丼でした。