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一難去ってまた一難という話 - BELGIUM -

No.476/2017.08
エネルギー環境事業部・環境開発部/ 天野 宏
画:クロイワ カズ

バイオマス燃料の調査でブリュッセルに一人で出張したときの話です。最初の仕事は、ペレットを作っているベンチャー企業の調査。その会社の社長の案内でペレット製造現場の視察を終えました。社長と別れて地下鉄でホテルまで帰る途中、駅の近くで夫婦と思しき男女が近づいてきました。男が私のコートの肩の部分を指差します。「鳩の糞がついている」と言っているようです。素早く女が布で汚れを取ろうとします。身の危険を感じて、急いでその場を離れました。これが予告編でした。

一旦ホテルに帰り、散歩がてら買い物に行くことにしました。グランプラスや小便小僧を観て、地下鉄の駅まで来ました。大きな駅で何本もの電車が停まっています。私の電車に乗ろうとした時、後ろから誰かが背中を叩きます。思わず振り向いた途端、何処に居たのか、もう一人の男が私の背広の内ポケットから財布を抜き取る。片手に傘を持っていたので防ぐことができません。男は素早く電車に乗り込み中を走ります。慌てて追っかけますが、男は開いているドアから巧みに隣の電車に乗り移って逃げてしまいました。財布には現金とカードが・・・。忽ち一文無しです。取りあえずホテルに帰って、訳を話し警察で被害届を出しました。カードはエマージェンシーの代替カードを発行してもらい、当座の現金は、朝の社長に電話して300ユーロを借りました。これで何とか予定していた仕事を無事終えました。


日本に帰ると、妻が新しい財布を買ってくれました。その夜、妻と娘と3人で近くの居酒屋に食事に行きました。食事が終わり、妻が勘定を払って娘の運転で帰宅。
着替えようと上着を脱ぐと、内ポケットに入れた筈の新しい財布がない! 財布を持つのが恐ろしくなりました。