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ドイツと日本を歌で結ぶ話 - GERMANY -

No.483/2018.03
宇部エクシモ(株)/ 渡邊 史信
画:クロイワ カズ

2004年、私たちは「グリュックアウフ会(以下GA会)」の新年会に招待されました。これは、ドイツ語で「御無事で!」という意味。危険な鉱山で働く男たちの願いが込められた挨拶です。GA会の北村侑三郎会長は、1949年に宇部興産の石炭部門に入社、57年にはドイツに派遣されました。当時、日本各地の炭鉱から約400人の優秀な若手炭鉱マンが、8年間ドイツ・ルール地方の炭鉱で働くという、日独両政府間の協定ができたのです。北村さんは出発前に山口県知事や宇部市長等から盛大な壮行会を開いてもらったとのこと。この派遣事業が修了し、日本に帰国した炭鉱マンたちはOB会を設立、「GA会」と名付けました。

一方、我々の会「メナーコア」は、「男声コーラス」という意味。デュッセルドルフ(DUS)の日本人駐在員や在留邦人がメンバーです。私は1988年にDUSに赴任したのですが、91年の湾岸戦争で駐在員出張禁止令が出た時に、当時の佐渡孝彦社長と二人で各社の歌好きに話を持ちかけてメナーコアを立ち上げました。同好の士との絆づくりと異国でのストレス発散になればという発想でした。メナーコアは一大組織に発展し、任期を終えて帰国した団員たちもメナーコア・ジャパンとして演奏活動を続けています。

2004年の新年会以降、北村会長のお陰で、GA会とメナーコア・ジャパンは定期的に集まるようになりました。我々のコーラスを聴いて頂き、最後には一緒にドイツ版「炭坑節」をドイツ語で歌います。

一方、メナーコア・DUSも今年で創立27年。昔、ドイツの炭鉱で多くの日本人が働いていたことを、定期演奏会等を通じて、ドイツの皆さんに歌で伝えています。この素晴らしい関係を私どもの大切な記憶遺産にしたいと切望しています。