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高分散性炭酸ストロンチウムナノ粒子を新開発

2015年5月14日

宇部興産株式会社(社長:山本謙)は、光学用途向けの高分散性炭酸ストロンチウムナノ粒子の合成に世界で初めて成功しました。

これまで液晶や有機ELディスプレイなどの光学フィルム用途向け位相差フィルム*1には、樹脂フィルムの層をいくつも重ねたものが実用化されていますが、製造プロセスが複雑で、コストが高いという課題がありました。
このような課題を改善するため、現在、樹脂に無機フィラー(充填材)を添加することで位相差フィルムを単層にするための開発が進められています。無機フィラーには、光学特性が制御可能な炭酸ストロンチウムが有望と言われていますが、従来技術ではナノサイズ粒子の合成は難しく、また溶媒の中での分散性も十分なものが得られませんでした。

このたび、宇部興産が開発した独自の気液反応法*2により、ナノサイズ(20~30nm)の針状炭酸ストロンチウム粒子の合成が可能となりました。さらに新しい表面処理技術により、有機溶媒中で透過率90%以上の高い分散性を示すことも確認されました。

新開発の炭酸ストロンチウムナノ粒子を添加した樹脂でフィルムを作製した場合、ヘイズ(曇り度)1%以下の非常に透明なフィルムの作製が可能になりました。  
この炭酸ストロンチウムナノ粒子を液晶や有機ELディスプレイ向け光学フィルムに用いた場合、視野角アップや画像鮮明化といった性能向上が期待できます。

現在、宇部興産では、炭酸ストロンチウムナノ粒子を使った様々な樹脂に適した表面処理方法を検討しており、ユーザーの要望に合わせて特性を自由に制御できる無機フィラーとして開発を進めています。
今後、位相差フィルム用途として光学材料分野へ幅広くサンプルワークすることで、ディスプレイ市場での採用を目指すとともに、コンデンサーやLED蛍光体といったフィルム以外の用途展開も検討していく予定です。

宇部興産は2014年7月に、グループ会社の宇部マテリアルズ(株)の研究開発部門を統合し、グループ全体で無機機能材料の研究開発を推進しています。中でも情報・電子分野における新規製品創出に注力しており、今回の新開発はその成果の1つです。

用語解説

*1 位相差フィルム
液晶ディスプレイ等を斜め方向から見た際の光の歪みや偏りを補正して、画面が正しく見える角度を広くする目的で使用されるフィルム
*2 気液反応法
気体と液体の界面で反応が進行する方法

参考写真

高分散性炭酸ストロンチウムナノ粒子のSEM写真

高分散性炭酸ストロンチウムナノ粒子のSEM写真

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