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I158

−総合分析− カーボンナノチューブに含まれる「金属元素」の分析

カーボンナノチューブ(CNT)には製造方法によって「金属元素」が含まれている場合があります。カーボンナノチューブ(CNT)に含まれる「金属元素」は、製品の性能や安全性に大きな影響を与えることが考えられます。特に電池電極などの用途、電子デバイスに用いる場合には低濃度レベルでの管理が必要と考えられます。このためカーボンナノチューブ(CNT)に含まれる「金属元素」の種類、量を分析することは重要であると考えられます。
カーボンナノチューブ(CNT)中に含まれる「金属元素」の分析を行うための代表的な方法としては蛍光X線分析法(XRF)、誘導結合プラズマ励起発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ励起質量分析法(ICP-MS)があります。


XRFは、Na〜Uまでの元素を非破壊(試料をそのままで)で定性することができます。またファンダメンタルパラメーター法(EP法)により簡便におおよその濃度も同時に測定することができます(定量下限値、数ppm〜数百ppm)。


ICP-AESでは、試料を水溶液(水に溶解した状態)にする必要があります。したがってカーボンナノチューブのような固体試料中の金属元素を分析する場合には、湿式分解法などの前処理により分解、溶液化する必要があります。しかしながら、この前処理により金属元素が揮散したり、不溶性の塩を生成するといった問題があります。このため正確な分析を行うためには、分析対象元素に合わせて適切な前処理を選択することが必要になります。

また、溶液中に存在する主成分の影響(物理干渉や分光干渉)のため、正しい値を得ることが困難な場合があります。その時には、マトリックスマッチング法、標準添加法等を用いて感度補正を行ったり、測定条件(波長)の選択が必要になります。これらを考慮することで正しい分析結果を得ることができます。

以上のような問題がありますが、ICP-AESでは、既知濃度の標準溶液を用いて検量線を作成して測定を行うので、XRFのEP法と比較して、精度よく正確な定量分析を行うことが可能です(試料換算の定量下限値、数ppm〜数十ppm)。また、上記のような問題が予想される場合には、実試料と平行して添加回収実験を行い、分析値の妥当性の確認をする必要があります。

以上のことから、未知試料中のNa以上の金属をもれなく定性(ppmオーダー)するにはXRFが優れ、特定の金属元素について定量を精度よく正確に行うにはICP-AESが優れているといえます。


ICP-MSでは、ICP-AESと同様に、試料を水溶液にする必要があります。したがってカーボンナノチューブの分析では同様の前処理の問題が発生します。またICP-MSはICP-AESと比較して、100〜1,000倍ほど高感度な分析が可能です。高感度の分析(超微量分析)を行う場合には前処理の選択はより難しくなります。 

また超微量分析を行うためには、ブランクコントロールが非常に重要です。そのためには熟練した分析者が、試料前処理、測定をクリーンルームで行う必要があります。

さらに、ICP-MSの測定におきましても、ICP-AESと同様かそれ以上に溶液中に共存する成分の干渉を受けやすいため、適切な質量数を選択する必要があり、また標準添加法等による感度補正も行わなければなりません。また、共存成分由来のスペクトルの重なり(質量スペクトル干渉)を低減するためにコリジョンリアクションセル法を用いたり、高分解能型ICP-MSを用いたりする場合もあります。

以上のような注意点はありますが、ICP-MSは現在最も高感度な金属の分析手法であると言えます。


カーボンナノチューブ(CNT)に含まれる金属を正確に分析するためには、「目的の金属」、「濃度レベル」、「共存する金属」に応じて、「前処理法」、「測定手法とその組み合わせ」を選択することが重要になります。


弊社では「金属の分析」に関して「前処理の検討」から「定性、定量」まで「総合的」に取り組んでいます。

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