HOME > 分析対象 > 材料 > 異物分析
O302

熱分解GC/MSによる糖類系異物の分析

携帯電話やデジタルカメラ等の故障原因の一つとして異物の付着が挙げられます。顕微赤外法により異物を同定することが一般的でありますが、異物によっては赤外スペクトルのみからの同定は困難な場合があります。例えばジュース飲料やお菓子類等の糖類ではでんぷんに良く似た赤外吸収パターンを示しますが物質の特定は困難です。

このように微量で、赤外スペクトルのみでは特定困難な異物には熱分解GCMS分析が有効です。ほとんどの有機物は熱分解により特徴的な熱分解物を生成します。その熱分解物を解析することで物質の特定が可能となります。

以下に実施例を示します。

実施例1. オレンジジュース乾固物とでんぷん

図1a:オレンジジュース乾固物とでんぷんのFT-IRスペクトルの比較

図1a:オレンジジュース乾固物とでんぷんのFT-IRスペクトルの比較

図1b:オレンジジュース乾固物(下)とでんぷん(上)の熱分解GCMSクロマトグラムの比較

図1b:オレンジジュース乾固物(下)とでんぷん(上)の熱分解GCMSクロマトグラムの比較

図1aに示しましたように、赤外スペクトルではオレンジジュース乾固物とデンプンの区別は困難です。

一方、図1bの熱分解GCMSでは両者の熱分解生成物のパターンは全く異なります。特にオレンジジュースではリモネンが特徴的な熱分解生成物として検出されています。

実施例2. コーヒー乾固物

図2a:コーヒー乾固物のFT-IRスペクトル

図2a:コーヒー乾固物のFT-IRスペクトル

図2b:コーヒー乾固物の熱分解GCMSクロマトグラム

図2b:コーヒー乾固物の熱分解GCMSクロマトグラム

図2aの赤外スペクトルから糖類の熱劣化物が予想されますが、物質の特定は困難です。
ところが図2bの熱分解GCMSでは、熱分解生成物としてコーヒーの含有成分として特徴的なカフェインが検出されています。

以上のように糖類系異物では赤外スペクトルからのみで物質の特定は困難ですが、熱分解GCMSにより熱分解生成物を観察することで物質の特定が可能となります。

前のページに戻るこのページのトップへ