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O532

MALDI Imagingによるマウス脳の脂質マッピング

MALDI Imagingは、生体分子(ペプチド、タンパク、糖鎖、脂質など)の質量分析に最も広く普及しているMALDI法を用いて、サンプル内での特定の分子の局在を可視化する技術です。生体組織切片をはじめとする平面状サンプルをレーザーでスキャンしながら微小領域の質量分析を行うことで、二次元の質量イメージを得ることが可能です。生体組織中のタンパク質・脂質の局在解析に留まらず、薬物動態や代謝物の可視化などにも応用の幅が広がっています。

本報告では、rapifleX:Bruker Daltonics製(技術資料「マトリックス支援レーザー脱離イオン化-タンデム飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/TOF-MS)」参照)を用いた、マウス脳における脂質の局在解析について紹介します。rapifleXは旧型機と比べて10倍以上の高速性を有しており、短時間で高解像度のMSイメージを得ることが可能です。

図1にマウスの脳組織切片全体の平均マススペクトルを示します。m/z 700〜900付近に脂質由来と推定されるイオンが多数検出されています。

図1:マウス脳組織切片全体の平均マススペクトル

図1:マウス脳組織切片全体の平均マススペクトル

図2にマウス脳のスキャナ画像および特定の質量ごとに色分けして二次元分布で表したMSイメージを示します。ここでは脂質成分であるスフィンゴミエリン(SM)およびホスファチジルコリン(PC)の(M+K)+に相当するイオン(m/z 769.6、822.8、844.8:それぞれ図1中の青線、赤線、緑線部)を抽出しており、MSイメージの重ね合わせによりそれぞれの成分が脳の領域ごとに異なる分布で存在していることが示されました。

※なお、本実験に使用したマウス脳切片試料は、同志社大学生命医科学部医生命システム学科 池川雅哉教授にご提供いただきました。

  • マウス脳のスキャナ画像
  • MSイメージ(重ね合わせ)
  • MSイメージ(各成分)

図2:マウス脳のスキャナ画像(左)およびMSイメージ(重ね合わせ:中央、各成分:右)

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