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O550

IR測定法(顕微透過反射法)

図1:顕微透過反射法の模式図

図1:顕微透過反射法の模式図

赤外分光分析(IR)は、有機物の代表的な分析法のひとつとして、古くから広く用いられており、サンプルの状態や目的に応じて、様々な測定法があります。今回は、顕微透過反射法について紹介します。

顕微透過反射法は、主に金属基板(または、赤外光を反射する基板)上の薄膜や付着物を測定する場合に用いられます。カセグレン鏡にて集光した赤外光を試料に照射し、試料を透過して基板で反射された赤外光からIRスペクトルを取得します(図1)。

測定例のひとつとして、図2に缶詰の蓋(裏面)にコートされた樹脂成分のFT−IRスペクトル(顕微透過反射法、顕微透過法)を示します。

図2:缶詰の蓋(裏面)にコートされた樹脂成分のFT−IRスペクトル (顕微透過反射法、顕微透過法)

図2:缶詰の蓋(裏面)にコートされた樹脂成分のFT−IRスペクトル
(顕微透過反射法、顕微透過法)

特長

この結果から、顕微透過反射法によるFT−IRスペクトルと顕微透過法によるFT−IRスペクトルの吸収パターンは、よく一致していることが分かります。標準スペクトルやライブラリスペクトルには、透過法によるものが数多くあり、本手法で得られたスペクトルは、スペクトル照合による同定が行いやすいという利点があります。また、試料のサンプリング(目的部位を削り取って回収する等)や前処理(加圧による薄片化等)することなく非接触にて、微小領域(数十〜100µm)の測定が可能であることも、利点として挙げられます。

注意点

本手法を適用するにあたっては、基板が赤外光を反射する(散乱や吸収が少ない)ことが必要条件となります。また、試料が厚い場合(例えば、10µm以上の樹脂膜)、吸収が飽和し、良好なスペクトルが得られないことがあります。図2においても、一部の吸収が飽和しており、樹脂がやや厚かったものと考えられます。

以上のように、一定の条件(基板、試料厚さ)はありますが、顕微透過反射法は、基板上の薄膜の同定/評価、基板上の異物の同定等の様々な場面において、その活用が期待されます。

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