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S355

単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルに及ぼす励起レーザ光強度の影響

カーボンナノチューブは黒色であるため、可視光を照射すると光を吸収し試料温度が上昇してしまいます。ラマンスペクトルは測定温度による影響を大きく受けるため、レーザ光を試料表面に集光して測定する顕微ラマン分光測定においては、試料の温度上昇に対する充分な注意が必要です。

図1は、CNI社製のHiPco法による単層カーボンナノチューブ(As Produced)を、532nmの励起レーザを用い、レーザ強度を通常条件から1%まで変化させて測定したときのラマンスペクトルの変化を示したものです。測定はスライドグラス上で10倍の対物レンズを用いて行いました。いずれの測定条件においても、カーボンナノチューブに特徴的なG-band,D-band及びRBMが観測されていますが、レーザ光強度を上げるに従いG-band,RBMともにピークがブロードになり、低波数側にシフトしていることが分かります。特にRBMについてはピーク形状も大きく変化してしまっています。

一般に、励起レーザ光の強度を上げることによってS/Nの良いラマン測定が可能ですが、カーボンナノチューブの場合、上述のように試料の温度上昇による影響が大きいため、レーザ強度によるスペクトル形状の変化を充分に調べた上で測定条件を決定する必要があります。

図1:単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルの励起レーザパワーによる変化

図1:単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルの励起レーザパワーによる変化

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