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S496

ELNES理論計算における内殻空孔導入の効果

EELSスペクトルのうち、エネルギー損失吸収端微細構造(Energy-Loss Near Edge Structure, ELNES)を解析することにより、試料の電子状態の情報が得られます(技術資料「EELSによる状態分析」)。従来、ELNESの解釈にあたっては、実験スペクトルとの比較が中心でしたが、近年では計算スペクトルも利用されており(技術資料「WIEN2k(固体の電子構造計算プログラム:EELS理論計算)」)、ここでは適切な構造モデルを構築する必要があります。今回は、密度汎関数法による電子構造計算プログラム(WIEN2k)を用いた場合の、内殻空孔導入の効果を紹介します。

入射電子によって試料の内殻電子を励起したとき、内殻軌道には電子の空孔(内殻空孔)が形成されます。そのため、測定されるELNESは基底状態を反映したものとはなりません。MgOのMg_K端ELNESにおいても、実験スペクトル(図(a)) に対し、基底状態の計算スペクトル(図(b))ではスペクトル形状を再現できないことが分かります。

内殻空孔を含む構造モデルを構築する場合、結晶の繰り返し単位の設定が重要となります。最小の繰り返し単位であるprimitive cellに内殻空孔を導入して計算すると、内殻空孔を導入した原子間の相互作用が大きくなるため、実験スペクトルを再現できません(図(c))。実際の測定中の状態に近づけるべく、より大きな繰り返し単位を設定すると、上記の相互作用が小さくなり、実験スペクトルの再現に効果的であることが確認できます(図(d)、(e))。

図:MgO Mg_K端の(a) 実験スペクトル、(b)−(e) 計算スペクトルおよび構造モデル

図:MgO Mg_K端の(a) 実験スペクトル、(b)−(e) 計算スペクトルおよび構造モデル

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