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ドローンが農業の未来をつくる

No.386/2020年8月号
京都先端科学大学<br/>
工学部教授 沖 一雄
京都先端科学大学
工学部教授
沖 一雄
長らくリモートセンシング応用の研究をされていましたが、最近はドローンも使われているとか?
沖: スマートフォンで簡単に操作できるドローンが登場してから10年くらいたち、いろいろなものに使えるな、という機運が出てきました。私はこれを農業分野に使えないかと、今、いろいろ研究し、実際に試しています。
人工衛星を使ったリモートセンシングで、農作物の管理、あるいは森林伐採の影響や湖沼の水質変化など環境の変化を見ていく研究を、長らく行ってきました。ところが、私が利用していた人工衛星は2週間に1回しか対象地点を通過しませんし、それも対象地点の上に雲などがあったり、空間分解能が悪く細かくはみられません。農作物の場合、少なくとも1週間に1回くらいは観測し続けて、ようやく役に立つ情報が得られるので、しばしばはがゆい思いをしていました。それが、ドローンの登場により、大きく変わりつつあります。いつでもどこでも気軽に飛ばすことができるし、雲の下でも飛ばすことができます。速く飛ばすことも、低く飛ばすこともできるので、空間分解能も上がり、葉の虫食いなども見ることができます。
いろいろな飛ばし方をして、さまざまな観測データを収集し、そのデータ解析から農作物の全体像を捉えようとしています。
良いことばかりのように思えますが、ドローンの問題点は何でしょうか。
沖: 最大の問題は、衛星に比べて圧倒的に観測範囲が狭く、限られていることです。これはバッテリーの問題ですね。飛べても20分くらいです。無線給電ができるようになるといいと思います。または、掃除ロボットのようにバッテリーの残量が少なくなってきたら、ドローン自ら充電器のところに戻ってくる、そして充電したらまた自ら飛んでいくといったシステムがあればいいですね。このようなシステムの研究はいろいろなところで行われているようです。
また、複数のドローンを一度に飛ばして広域を対象とした情報を収集するという研究も行われていますね。ドローン同士が通信しながら、相手の位置と進む方向を確認して安全を確保しながら、大量のデータを取得する方式ですね。複数のドローンの運行方式やルールは、ドローンの活躍の場が広がった時点で、非常に重要になります。
画:クロイワ カズ
そういうものができたら、ドローンの使い道が大きく広がりますね。
沖: 大きく変わると思います。ただし、今は、法律上の問題もあります。ドローンは、それが見える範囲でしか飛ばしてはいけないことになっています。例えば、ドローンで物を運ぶ研究にしても、目的地までの間に人が立っていて、「今、通過した」と確認しながら実験を行っています。技術的にはかなり遠くまで安全に飛ばせるレベルに到達していると思うのですが…。
ドローンを含めリモートセンシングで大事なことは、データを取得するだけでなく、それをいかに役に立つ情報に変換して、人々に利用してもらうかということです。例えば地球観測衛星にしても、気象衛星は天気を教えてくれますが、他のものは科学研究に役立っても、市民に役立つ情報を提供してくれるものは少ないですね。これは人工衛星の今後の課題です。
ドローンを、電気や水道、インターネットのようなインフラとして社会に組み込んでいくことが重要ではないかと思っています。ドローンが飛んでいるのが当たり前で、その情報を使って私たちの生活レベルを上げることのできる社会を実現していきたいですね。
私たちは農作物の管理や環境観測に使おうとしていますが、例えば農業では、今後は後継者がどんどん減ります。ドローンで取得した農作物の状況を、農業のプロが見て、いつどんな作業をすべきかを判断できるシステムを、まずつくろうと思っています。やがてはこの判断も、AIで行うようにします。そうなれば、素人でも農業経営に参入できるようになります。
このようなシステムによって、明るく開けた農業の未来をつくり出したいですね。

※本企画は、当社の協賛で日経サイエンス誌に広告として掲載しているものであり、当社の研究開発、製品等と直接の関係はございません


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