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深センを見ずに中国を語るなという話(2) - CHINA -

No.501/2019.09
化学カンパニー・ナイロン営業部/ 若本 卓視
画:クロイワ カズ

前号で、急成長した大手ハイテク企業の多くが深センに集中していて、深センが未来都市だという話をしました。今回はその象徴の一つである「キャッシュレス社会」について紹介したいと思います。

深センに赴任した直後は大いにまごつきました。財布を持たないと心理的に不安でした。が、現金が通用しないことを徐々に学びました。タクシーも現金を受け取らない。それは、現金が嫌なのではなく、運転手が釣り銭を持たないからです。現金を持たなければタクシー強盗もありません。また、深夜まで営業するレストランやコンビニでは、現金があると危険です。キャッシュレス決済なら、そのリスクはありません。マーケット全体に現金という流通手段が消滅しかかっているのです。代わりをするのがスマホ。スーパー、コンビニ、レストラン、地下鉄、タクシー...。スマホがあればOK。スマホでの代金支払いをモバイルペイメント(MP)と呼びますが、中国のMPには、アリペイ(支付宝)とウィチャットペイ(微信支付)の2社があり、このどちらかに加盟しておけば大丈夫。請求には必ず両社のQRコードが表示されるので、そのどちらかをスマホで読み取れば自動的に支払いは完了します。QRコードとは、二次元のバーコードで、迅速な対応(Quick Response)を可能にしたものです。MPは、自販機、貸し自転車、レンタル傘などにも対応でき、個人間でのお金のやり取りも可能。お正月のお年玉や面倒なチップもMPで済ませます。

慣れると、とても便利。スマホさえあれば、財布は不要で、実際、多くの若者は財布を持っていません。ただ、スマホを使わないお年寄りなどへの配慮は皆無なので、高齢化社会の日本でこのシステムが採用できるかどうかは疑問です。