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手術の決断が早すぎた話 - GERMANY -

No.505/2020.01
化学カンパニー・技術戦略部/ 猪股 史朗
画:クロイワ カズ

昨年の9月、駐在先のドイツからアイスランドに家族旅行した際、車の運転中に少量の下血がありました。少量だったので、薬局で買ったガーゼやテープで応急手当をして、そのまま旅行を終えました。ドイツに帰って数ヵ月後、再び下血があり患部が痛むので、日本人の医師に相談。英語の喋れる肛門科の先生を紹介してもらい、病院を訪ねました。診察の結果は痔瘻(じろう)。緊急ではないが、手術しなければ治らないだろうと言われました。どうせ切るなら早い方がいい。手術の覚悟を決め、病院と相談の上、手術日を2月1日とし、病室の予約も取りました。

日本と違って、ドイツでは手術となると事前手続きが大変です。たくさんの書類にサインを要求されます。最初は辞書を引きながら理解した上でサインしたのですが、終わりの方はろくに内容も読まずにサインです。しかし、この手術の決断は早すぎたようです。というのは、その翌週、私に4月帰国の辞令が出たのです。この段階で手術のキャンセルはもう不可能。

全身麻酔の一瞬の激痛と普段見せないところを人前に晒す恥辱に耐えて、手術は無事終わりました。が、術後ケアの日取りが十分とれず、後は日本の医師に委ねる積もりで4月中旬に帰国しました。

ところが、帰国してすぐに診てもらった評判の良い先生は手術跡を丹念に調べた後、驚きのコメント。

「この手術の方式は日本のものと異なります。このままの状態からアフターケアするのは難しい。もう一度、こちらで手術していただくのが最善の方法でしょう」

「チョット待った! 短期間に2度もお尻を切るの?」結局、再手術を受けましたが、さすがに今度の決断は尻が、イヤ、気が重かったです。