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自分の名前で大いに戸惑った話 - SPAIN -

No.507/2020.03
化学カンパニー・ファインケミカル営業部/ 大上 誉志貴
画:クロイワ カズ

トレーニー制度で、1年あまりスペインに滞在しました。長期滞在になると、旅行に行くようなわけにはいきません。現地で仕事をするための労働許可証、それをベースにした滞在許可証(ビザ)などが必要になります。

この段階で大きくつまずきました。私の苗字が問題になったのです。「大上(おおうえ)」は、ローマ字では「OUE」と書きます。スペイン語にはこんな単語はありませんが、よく似た単語に「Que」というのがあります。これは、願望や強調を表すときに用いられたり、関係代名詞として英語のthatのように使われたりと、とても使用頻度が高い単語なのです。

日本でも、最近のパソコンで英文を打ち込むと、機械がスペルチェックして、誤字を自動的に訂正してくれます。例えば、非常に使用頻度の高い「the」を間違えて「teh」の順に打ち込んでも、機械がそれを誤字だと判断して、自動的に「the」と変換してしまいます。同じことがスペインでも起こりました。労働許可証、ビザ、保険証などに印字された私の苗字はどれも「QUE」になっているのです。日本で発給されたパスポートは当然「OUE」です。だから、私が偽造の証明書を使っているのではないかと疑われました。日本のパソコンでは簡単に打ち込める「OUE」が、スペインのパソコンでは、どれも「QUE」と表示されてしまいます。それだけのことですが、私には大きなトラブルでした。

日本には、大上の名前はあまり多くないでしょうが、それでも1万人近く居られるようです。どうか大上さん、もし、スペインに行かれる場合には、パスポートの申請段階で、ローマ字表示を「OHUE」にするとか、何らかの配慮をされることを強くお勧めします。