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エレベーターで泥棒に間違えられた話 - CHINA -

No.397/2011.01
機能品・ファインカンパニー/ 中井 正樹
画:クロイワ カズ

中国に単身で駐在していたときのこと。夕食にはよく隣のビルの5階にある食堂を利用しました。

その日も、夕食に出かけエレベーターに乗ろうとすると、7人ほどの団体がやってきます。彼らを先に入れて、私は最後に乗り込みました。団体はエレベーターの中でも大声で話していました。

5階に着き、急いで食堂へ。簡単な食事を注文しました。先ほどの団体は少し離れたテーブルで何やら騒いでいます。私の料理はなかなか来ません。待つこと40分、やっと運ばれてきたのを早食いして、食堂を出ようとしたときです。

「ちょっと待て!」と突然呼び止められました。見ると公安警察が2人、私の方をにらんでいます。身分証明書の提示を求められました。どうやら食事を待たせておいて、その間に誰かが警察を呼んだらしいのですが、何のことかさっぱり判りません。

「エレベーターの中で女性が財布を盗まれた。お前が怪しいと言っている」年配の警察官が口を開きました。

「とんでもない。私は日本の会社の駐在員だ」

パスポートを出して渡しました。年配の男の顔色が変わりました。私を中国人と思っていたようです。が、若い男は署への同行を求めてきました。私は潔白を主張。気がつくと先ほどの連中が様子を窺っています。

「日本人なら泥棒をしないのか」と、女性の声。そこまで言われると私もカチンときました。

「よろしい。今からここで裸になるから好きなだけ捜してみたらいい」と、上着に手をかけました。さすがにこれが効いたのか、その場で無罪放免になりました。

そのことがあって以来、団体と一緒のエレベーターに1人では乗らないようにしています。