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天井から汚水が降ってきた話 - U.S.A -

No.417/2012.09
東京本社経理部/ 鈴木 洋輔
画:クロイワ カズ

ニューヨーク駐在3年目、2010年の話です。

休日の昼下がり、我が家の直ぐ前にある小さなバーで妻と2人、一杯やっていました。突然、アパートの4階の方角から鋭いアラーム音が…。我が家は2階にあるのですが、4階の部屋ではこれまで何度か火災報知器の鳴り出す騒ぎがありました。またやってるわい、と気にも留めなかったのですが、家に帰ってビックリ。

床は水浸し! トイレを覗くと天井から茶色の水が滝のように落ちてくる。4階の部屋のスプリンクラーが作動したようです。慌てて床のものをベッドの上に放り投げて一時避難。外では、アパートの住人たちが心配そうに4階の辺りを見上げています。一段落して戻ってみると、水は引いていましたが、カーペットはビショ濡れ。おまけに下水の臭い。その夜は悪臭が鼻について眠れません。妻は、日本に帰りたいと泣き出す始末。

翌朝、大家さんに電話してカーペットを取り替えてもらうことにしました。カーペットは家中全体に敷いてあるので、全部でたたみ40畳ほどの広さになります。家具の移動が大仕事です。その日は同じアパートの友人宅に布団を持ち込んで寝ました。

次の日の夕方、張替え工事は完了。でも、突貫作業だったとみえて、カーペットの切れ端などが散らかり放題。落ち着くまでに4、5日かかりました。

この事件は、その後もずっと妻のトラウマになっていました。しかし、半年後に起った日本での大惨事がそれを吹き飛ばしてしまったのです。3・11の大津波の様子はアメリカでも放映され、私たちも息を呑んで画面を見つめました。あまりの惨状に声も出ません。

私たちの事件などは、蚊が刺したほどでもなかったのです。