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屈辱をバネにUBEに就職した話 - GERMANY -

No.421/2013.01
ウベ・ヨーロッパ/ 藤谷 和子
画:クロイワ カズ

2002年、鹿児島の大学在学中に「九州10大学・ドイツ研修旅行」に参加しました。専攻は経済学ですが、第2外国語のドイツ語に惹かれたのです。研修に先立って、経済はそっちのけでドイツ語の猛特訓を受け、63人の研修生とともにドイツへ。

研修旅行の合間、イベントごとに各人がドイツ語で感想を発表するのですが、私の課題はミュンヘンの教会でパイプオルガンの演奏を聴いて、感想を述べるというものでした。私は演奏を聴く前から、自分なりの感想を作文して暗記するのに必死でした。演奏の間も、憶えたスピーチを口の中でブツブツ繰り返して練習です。そして、いよいよ私の出番。壇上から見渡すと、みんなの視線がこちらに集中しています。最初の台詞を言おうと口を開いた途端、頭の中は真っ白。ほんの数秒間がもの凄く長い時間に感じられ、「ダンケ・シェーン」とひと言。それ以外は何も言えなかったのです。

その時の屈辱をバネにドイツ語をマスターしようと決意。4年生になると、第1期の交換留学に応募、ミュンヘンで1年間ドイツ語を学びました。卒業後は大阪でドイツ貿易主体の商社に就職、ドイツ語を使って実務を習得しました。ある程度自信がついたところで退社して、単身ドイツに渡りました。両親は心配そうでしたが、なんとか許してくれました。

ドイツでは、シュツットガルトとハンブルグで小さなメーカーに住み込みで働き、日本語とは無縁の生活を送りました。そろそろ日系企業で落ち着きたいと探していたところ、今年6月、運よくウベ・ヨーロッパに現地採用されたのです。現在、親切な仲間と楽しく仕事に励んでいますが、UBEに就職できたのもあの時の屈辱のお陰。今では懐かしい想い出になりました。