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眼からウロコのサマースクール - U.S.A. -

No.436/2014.04
法務部/ 石田 旭
画:クロイワ カズ

昨年の夏、カリフォルニア大学デービス校のロースクールで法律英語の研修を受けることになりました。デービスはサクラメント郊外にある人口6万のこじんまりしたコミュニティ。治安もよく落ち着いた町です。

研修の一環として実際の裁判を見学する機会があり、他の研修生と一緒に郡裁判所(日本の簡易裁判所に近い)の傍聴席に座りました。この日の裁判は、地元のスーパーでワイプ(汚れ拭き)2箱(24ドル相当)を盗んだとして逮捕された案件。被告人は中年の黒人女性です。

裁判のメンバーは、陪審員12名と補欠が1名、検察官(女性)1名、被告人1名、弁護人(女性)1名、それに女性判事1名。記録係などを加えると20名ほどの陣容です。先ず、検察官が罪状を陳述し、次に弁護人が反論します。その中で、特に事件の背景には人種差別があり、これは不当逮捕であると強調しました。審理開始から1時間半ほどで残念ながらタイムアップ。我々は次の研修に向かうため、裁判所を後にしました。

この裁判の結果がどうなったのかは分かりませんが、印象的だったのは2点。1つは、小額の窃盗容疑でもこれほどまで大掛かりな裁判をやるということ。日本では考えられない話です。もう1つは、表面上は平等を謳ってはいても、アメリカ人社会の水面下では人種意識が根強く残っているのではないかという点です。2時間足らずの見学でしたが、訴訟大国と人種の坩堝という2つの側面をしっかり確認することができました。恐らく、この2つはどこかで絡み合っているのでしょう。

2ヶ月間の研修で片方の眼からウロコが取れたように思います。もう片方のウロコも早く取れるように頑張ります。