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雨空を快晴に変えるマジックに驚いた話 - CHINA -

No.447/2015.03
エネルギー・環境事業部/ 末廣 哲郎
画:クロイワ カズ

2007年、駐在員として北京に赴任しました。翌年8月には北京五輪がありました。当時、大気汚染が問題となっていて、おまけに8月は雨の多い時季。オリンピックの開会式だけは世界にクリーンな空をアピールしたいと、当日早朝には小型ロケットで1,000発以上のヨウ化銀(雨粒の核になる)を打ちあげ、雨雲が会場近辺に流れてくる前に人工雨で雲を消散させたとされます。その効果があったのか、開会式の会場は晴れでした。

元々、中国では水不足の解消や大気汚染対策として、以前から人工降雨の研究が進んでいるようです。私がその威力を目の当たりにしたのは翌2009年10月1日、建国60周年の記念式典でした。

その日は、天安門広場で軍事パレードがあり、航空ショーも行われるというので、朝早くから出かけました。

前日は霧まじりの小雨、当日の朝はどんより曇っていました。ところが、10時ごろから雲が少なくなり、航空ショーの始まる12時にはすっかり晴れ上がりました。

突然、東の空から轟音とともに10機ほどの戦闘機の編隊が現れました。先頭は大型の爆撃機でしょうか、それを挟んで左右に戦闘機が4機ずつ、V字編隊で従います。軍事パレードの上空に差し掛かると、左右の戦闘機がお尻から赤、黄、青、緑などの煙を吐きだして猛スピードで西の空に飛び去りました。後には、快晴の空を背景に、8本の鮮やかな煙の帯が漂います。すごい迫力!澄みきった青空があってこその迫力でした。

私は2012年に帰国しましたが、日本でも北京の大気汚染のことが時折テレビで報道されます。街を歩く人たちがマスクを着けたり、ハンカチで顔を覆ったりする姿を見ると心が痛みます。早くあの素晴らしいマジックで北京の空気をきれいにしてほしいものです。