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玄関前で一家総出の出迎えを受けた話 - HONG KONG -

No.459/2016.03
ナイロン・ラクタム・工業薬品ビジネスユニット/ 溝上 耕二
画:クロイワ カズ

香港駐在時代の話です。香港のマンションでは、多くの家の玄関が鉄格子の引き戸と中に入るドアの二重扉になっています。防犯と風通しのためと思われます。風水では風通しを重要視します。

ある年の師走の夜、オフィスの連中とクリスマス会に出かけました。オフィスには私を含めて日本人が2人、ローカルスタッフが11人働いています。年に一度のクリスマス会は無礼講で、ローカルスタッフが日本人スタッフをやっつける会でもあります。その日もビールやパイチュウを次々と飲まされ、すっかり酩酊。次第に意識も薄れて行きました。

翌朝、自宅のベッドで目が覚め、前夜のことを思いだそうとするのですが、どうもハッキリしない。唯一思いだしたのは玄関前で一家総出の出迎えを受けたこと。といっても、妻と3歳になる息子、それに日本から遊びに来ている義姉の3人ですが—。

妻の話でコトの次第が分かってきました。私が「カンペエ(乾杯)」を交わしていた頃、家では3人が玄関の外に居たといいます。義姉が鉄格子の戸に興味を示し、カメラを持ち出して鉄格子戸を撮影、ついでに皆で記念写真を撮っていたとか。息子は二重扉で遊んでいたのですが、何かの拍子にカチャッと鉄格子戸が施錠され、3人は締め出されてしまいました。鍵はリビングのテーブルの上。慌てて私の携帯に電話しても誰も出ない。仕方なく待っているところに、警備員に担がれて私が帰って来た。上着は何処かに置き忘れてきたようですが、手にはしっかり鍵の入った鞄を下げていました。で、全員が無事家の中に入ることができたというわけです。

酔っぱらって帰宅したのに歓迎されたのは初めての経験でした。