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庭は狭い方がいいという話 - U.S.A. -

No.462/2016.06
宇部興産機械(株)/ 丸末 善朗
画:クロイワ カズ

アメリカに駐在していた時の話です。私の勤務地はミシガン州・デトロイトの郊外。大都市と違って、アパートは少なく、殆どが庭付き戸建住宅です。私の借りたのも300坪ほどの庭が付いた一軒家でした。家族は広い庭に大喜び。私も当初は大満足でした。

こちらの住宅の庭には、ほぼ例外なく緑の芝生が植えられています。刈り込んである芝生は美しいです。リスや小鳥が遊びに来て、のどかな景色に癒されます。が、芝が伸びてくると厄介です。更に、芝の間からタンポポが出てくると一面タンポポ畑のようになります。伸びた芝にタンポポとくると手入れの悪い庭の見本です。

春先に先ず肥料をやり、除草剤を撒くことから庭の手入れは始まります。その次に専用の農薬でタンポポを除去します。最初の年、誤って強い薬剤を使ったのか、タンポポだけでなく周辺の芝が枯れ始めました。これはいかんと、新しい種を蒔きますが土に薬が浸透しているためか一向に芽をださない。仕方なく、枯れた芝を土ごと裏庭に運び、新しい土と種を入れました。

6月、近所では緑の芝が美しく生えそろった頃、我が家の庭はところどころに芝があって後は土肌が丸出し、まるで日本地図のようです。英語の諺にある「隣の芝は青い」とはこのことか、と思い知らされました。

翌年からは、何とか格好がついてきましたが、春秋は芝の成長が早く毎週芝刈りに追われます。夏は毎日水撒き、秋は我が家の木だけでなく、何処からか飛んでくるたくさんの落葉の掃除、冬は深々と積もった雪掻きと、一家の主の仕事は続きます。

帰国後は宇部に暮らしていますが、我が家にも小さな庭があります。妻はアメリカ時代の広大な芝生を懐かしがりますが、私は今の狭い庭で十分です。