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入居したビルで2度の惨事を経験した話 - U.S.A. -

No.480/2017.12
化学カンパニー 電池材料・ファイン事業部/ 河裾 伸
画:クロイワ カズ

約6年間ニューヨーク(NY)に駐在、この春帰国しました。

赴任の翌年、ハリケーン・サンディが東海岸を直撃。我々のオフィスは市の中心、グランド・セントラル駅に近い高層ビルにあります。台風慣れしている我々からすれば大事件でもないのですが、NYではライフラインが全面ストップ。証券取引所も閉鎖となる騒ぎ。地下鉄も不通でオフィスは完全クローズです。停電が長く続き、携帯電話は電池切れ。オフィスの連中の安否確認ができません。床上浸水した地区にはローカルスタッフが1人居住しています。彼女から連絡が入ったのは4日後でした。オフィスが復旧したのは1週間後。世界一の都市でのインフラの脆さを痛感させられました。

次のハプニングは3年後、今度は典型的な人災でした。オフィスはビルの最上階28Fにありますが、更に上の階には冷暖房や貯水槽などのユーティリティがあります。事故はエアコンの取り替え中に起きました。クレーンのトラブルで5トン近いユニットが屋上から落下したのです。休日で通行人も少なく、人的被害は軽微でしたが、高層階の窓ガラスは壊滅的。訴訟社会のアメリカでは先ず事故調査に重点が置かれます。ビル全体を立ち入り禁止にして、地元の消防署や保険会社が徹底的に原因を調べます。お陰でこの時も1週間のオフィス閉鎖。尚、オフィスの窓ガラス修理も大幅に遅れて長期間板張りでした。完全復旧したのは何と1年後でした。

日本に帰国して、台風や地震を何度か経験しましたが、感心するのは復旧の早さです。今年は、各地で河川の氾濫など、大きな被害がありました。が、大都市ではライフラインは速やかに復旧し、オフィスがクローズすることもありません。これこそサプライズです。