MENU

新規光触媒繊維の開発

-環境汚染物質の分解に有用な素材-

2002年3月7日
※ 本製品は2013年10月1日で販売終了いたしました。

宇部興産株式会社(社長:常見和正)は、光照射によりあらゆる有機物質の酸化分解機能を発現するナノレベルの表面傾斜構造を持つ高強度チタニア繊維の開発に世界で初めて成功した。この繊維の画期的な合成法ならびに代表的な特長に関する学術論文は、3月7日発行の英国の科学雑誌ネイチャー(Vol.461、pp.64-67)に掲載されている。

合成法・特長

この新規なチタニア繊維は、有機ケイ素ポリマーからなる原料に熱処理によりチタニア結晶に変換され得る低分子量化合物を混合しておき、紡糸後の高温空気中で焼く過程にブリードアウトと呼ばれる自然現象(内部から表面に物質が移動する現象)と無機化を競争的に進行させることにより合成される。この画期的な方法により合成されたチタニア繊維(直径約5ミクロン)は、中心部はシリカで表面に向かってナノレベルのチタニア微結晶の濃度が増大してゆく傾斜組成を有しており、最表面はチタニア微結晶が焼結した構造からなる。この為、従来の粉末コーティング品やゾルーゲル法による製品では実現できなかったチタニア層の剥離問題が解決され、また2ギガパスカルという高強度をも合わせ持つことから、空気浄化分野のみならず環境汚染物質を含む排水浄化分野においても大きな用途展開が期待される。

具体的用途展開

これまで宇部興産 宇部研究所での検討で、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドやタバコの煙に含まれるアセトアルデヒドは勿論のこと、難分解性物質といわれる猛毒のダイオキシン(青酸カリの二万倍の毒性)や温室効果の極めて高いフロン等を無害の状態に効果的に分解することが確認されている。また、浴槽中に存在することで問題視されているレジオネラ菌や大腸菌に対しては、死滅活性を示すとともに菌の細胞や毒素を完全に二酸化炭素にまで分解し水の濁り防止にも優れた効果を発揮することが分かっている。

従来の光触媒製品との差異

従来の光照射酸化分解活性を有するチタニアは600℃を超えるとその活性を失うが、このチタニア繊維は1,000℃まで活性を維持しており、高温雰囲気下での使用にも大きな効果を発揮する。チタニアの親水性を利用した光触媒関連製品が数多く上市されているが、チタニアの酸化分解機能を利用した商品としては、これまで、ハニカム構造物や多孔性セラミックスの上にチタニア粉をコートしたり、バインダーを用いて担持基材に組み込んで、空気清浄器、タバコの煙を処理する分煙器等のフィルター部分に応用されてきている。しかし、ハニカム構造、多孔性セラミックスでは影の部分ができ、照射した光を有効に利用できなかった。また分解しきれないタバコのやに、無機のほこりなどを取り除いて再生しようとすると表面にコートしていたチタニアが剥がれたりするという問題を有していた。今回開発された光触媒繊維は、光学的に透明で、またどのような形状にも対応できるので、光の利用率が大幅に向上し、激しい条件でもチタニアが剥がれないことから、空気浄化分野でその用途を更に広げることができる。また、これまで水浄化分野でチタニアの光触媒機能は確認されているものの、光照射と水の接触とを両立させる事が難しく、水中で実用化された商品はない。宇部興産で開発された光触媒を用いれば、その耐久性・形状の自由度を活用し、水中での実用化にも大きく寄与するものと期待される。

今後の展開

宇部興産では、繊維及び不織布の研究開発を既に終了しており、2002年度の早い時期には大量サンプル提供の体制を整える。今後、この独自技術を生かした製品の事業化を図り、一兆円産業と予測されている光触媒市場への参入を狙う。

UBE光触媒繊維不織布

UBE光触媒繊維不織布

お問い合わせ先

ニュースリリースについてのお問い合わせ