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産業排熱から高効率に発電できる高性能熱電変換材料を開発

2004年3月29日

宇部興産(株)(社長:常見和正)は、かねてより研究開発を進めてきた熱電発電技術の実用化において、このほど中温度領域(250℃~450℃)で高い性能を示す熱電変換材料の開発に成功した。

この材料は、今まで強度が弱く実用が困難といわれていた亜鉛とアンチモンを主成分としながら、独自のセラミックス製造技術により実用強度を有する焼結体であり、基本組成において熱電変換材料の性能を示す指数である無次元性能指数ZTが1.6(400℃の値)を超える高い性能を確保している(従来の代表的な熱電変換材料では、1.0~1.1程度)。
また、この材料を用いた中温度領域で高い発電性能を示す熱電変換モジュール作製のプロセス技術もほぼ完成している。

宇部興産(株)では、既に低温度領域(300℃以下)の産業排熱回収に最適な独自の大型熱電変換モジュール(ビスマスとテルルが主成分)を開発済みであり、今回開発したこの材料と組み合わせることにより、500℃~600℃までの排熱を回収し、10%以上の高い変換効率で発電できる見込みを得た。

このような熱電変換モジュールの適用先としては、分散型電源の排熱や、各種製造プラントの排熱、自動車からの排熱などが有望と考えている。

今後の展開として、宇部興産(株)では、2004年度より今回開発した材料を用いた中温度領域の排熱回収への用途展開に着手していくと共に、大型熱電変換モジュールや、これを応用した熱電発電システムの試作販売を積極的に行っていく。
また、宇部興産グループにおいて未利用エネルギーの有効活用を積極的に進めていくため、2004年度に、グループ会社の宇部マテリアルズ(株)(社長:光井一彦)保有の各種製造プラントに熱電変換の実証プラントを設置し、省エネルギー効果を発揮すると共に電力コストを低減していく計画である。同社はこの実証プラント設置を契機に、熱電発電事業への進出も視野に入れている。

尚、今回開発した材料の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)の「高効率熱電変換素子開発先導研究」及び「高効率熱電変換システムの開発」各プロジェクト(原課:経済産業省製造産業局非鉄金属課)において得られたものである。

今回の開発内容については、2004年春季応用物理学関係連合講演会(主催:(社)応用物理学会、会期3月28日~31日、会場:東京工科大学)で報告の予定(3月30日午後)であり、翌31日にも2004年日本金属学会春期大会(主催:(社)日本金属学会、会期3月30日~4月1日、会場:東京工業大学大岡山キャンパス)において報告の予定。

参考資料

1.熱電発電とは

熱電発電は、右図に示すように、特殊な半導体材料の特性により、温度差を利用して熱を直接電気に変換し、発電するものです。
可動部をもたず、比較的構造が簡単で、規模依存性がないため、分散した未利用熱エネルギーの回収に適しており、省エネ、環境保全への効果が期待されます。

熱電発電

2.今回開発に成功した熱電変換材料の断面写真

熱電変換材料の断面写真

※ZnSb系材料の微細構造を示す断面の光学顕微鏡写真。試料の切断面を研磨し、エッチングにより粒界構造を露わにしたもの。

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