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急速充放電・高電圧・大容量を可能にする非リチウムイオン型新規蓄電電源の開発に成功

2006年4月5日

宇部興産(株)(社長:田村浩章)は、キャパシタ並みの急速充放電性を持ちながら、高電圧・大容量を可能にする、新しい蓄電電源の開発に成功した。

将来のEV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド電気自動車)の電源には、高電圧と、一度の充電で長持ちする高いエネルギー密度が必要であると同時に、急速な充放電や安全性など、様々な特性が要求される。
リチウムイオン電池はこの蓄電電源の有力な候補のひとつであるが、従来のリチウムイオン電池は、正極にコバルトやニッケルなどを層状にした化合物を、負極にグラファイトを用い、高電圧と高いエネルギー密度を持つものの、急速な充放電には課題を残していた。
一方で、電気二重層キャパシタは、正・負極ともに特殊な活性炭を使用することで、急速な充放電を可能にしたが、電圧は3Vに満たず、エネルギー密度はリチウムイオン電池の1/100程度しかないという欠点があった。したがってそれぞれの問題点を克服するため、近年リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタの特徴を併せ持つ、リチウムイオンキャパシタなどの研究が盛んに行われている。

宇部興産がこの度開発した新規蓄電電源は、正極と負極に異なる炭素材料を構成し、電解液には、リチウムイオン電池用電解液で圧倒的シェアを誇る宇部興産の「機能性電解液」のコンセプトを適用した、非リチウム含有電解液を用いている。これにより、キャパシタ並みの急速充電性を持ち、安全性も高めるともに、電解液にリチウムイオンを使用していないにもかかわらずキャパシタの10倍以上のエネルギー密度を可能とし、さらに3.2Vの蓄電電圧をも達成した。
また、この新規蓄電電源の実用性を実証し、今後の事業化にfg向け更なる改善を進めるために、当電源のみで駆動する小型のEVを試作し、すでに市街走行を実施している。

宇部興産は、電池材料事業を重点事業と位置付け、ユビキタス社会に必須な電源として大きく成長したリチウムイオン電池用の電解液やセパレータ事業を急速に拡大させており、電解液では「機能性電解液」市場を創出しハイエンド分野をリードするとともに、セパレータではコスト競争力を武器に海外市場を中心に展開する一方、EV・HEV用途に特化した設計思想によって開発されたグレードの本格採用が複数のユーザーで有力視されている。これらに加え、蓄電デバイス向け材料など、電池周辺事業についても開発を進めており、今回の開発成功はこの分野での成果のひとつ。

現在の電池材料事業の売上げは約100億円であるが、既存の電解液・セパレータの売上げをそれぞれ拡大させるとともに、今回開発に成功した新たな蓄電電源など電池周辺材料にも展開を広げることにより、2010年には200億円以上の売上げを目指す。
また本件のように、新たな技術・コンセプトにより従来に無い市場を自ら創造・先取りした上で材料提供していくという戦略を、今後も推進していく。

新規蓄電電源 新規蓄電電源
新規蓄電電源を搭載した小型EV(電気自動車) 新規蓄電電源を搭載した小型EV(電気自動車)

新規蓄電電源と、それを搭載した小型EV(電気自動車)

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