宇部興産株式会社（本社：山口県宇部市。代表取締役社長：竹下道夫）とアドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社（本社：東京都文京区。代表取締役社長：原豊。略称「ASＭ社」）とは超分子ポリロタキサン（以下、「PR」）を原料とした革新的な高分子材料『SLIDE-RING MATERIAL®』（スライドリング マテリアル、以下「SRM」）の事業化を促進するためのマーケティング並びにSRM製品の企画・開発を含む包括的な提携に合意致しました。
宇部興産の機能品・ファインカンパニーファインケミカルビジネスユニットとASM社は、2007年からPRの量産化に関する共同研究等を行っております。更に今回の包括提携により以下を含む幅広い活動を協力して実施することで、SRMの事業化を加速します。
宇部興産は有機合成や高分子設計の技術プラットフォームを基礎として、電子情報機器や自動車等の成長分野に多様な先端材料を開発、供給しています。今後はその販路や技術開発力を活用することで、ユニークな高分子材料SRMの早期実用化に貢献します。
なお宇部興産とASM社は両社の包括提携の条件等、内容詳細は公表致しません。
※『SLIDE-RING MATERIAL®』はアドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社の登録商標です。
図1. SRMの模型図
ひも状の巨大分子である高分子は、繊維、衣料品、プラスチックやゴム、生活用品や食品など我々の身の回りで頻繁に使われている材料です。この高分子材料の特性を変える代表的な方法として、ひも状の高分子を化学的に結合（架橋）し、ネットワークを形成することがよく行われています。高分子の架橋は、古くは1839年のグッドイヤーによる架橋ゴム（タイヤへと発展）に端を発し、現在まで盛んに利用されてきました。
2000年に、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 伊藤耕三研究室では、高分子（ポリエチレングリコール）と環状分子（シクロデキストリン）から構成される、すかすかのネックレス状分子（ポリロタキサン）を作製し環状分子同士を架橋することによって、図1のように架橋した部分が自由に動く超分子ネットワークSRMを世界で初めて合成することに成功しました。本構造の基本特許は、東京大学TLOを通じて出願され日本・アメリカ・中国・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア及びカナダですでに成立しています。
SRMは、その高伸縮性、耐傷性、生体適合性等の特長により塗料やファインケミカル・各種工業製品・医療製品などへの用途展開が期待され、具体的な採用例*1も出ています。
図2. 通常の架橋とSRMの架橋の比較
架橋点が自由に動けると、高分子材料の力学特性は実に大きく変わります。
図2に模式的に示したように、従来の高分子材料では架橋点が固定されているために、外部からの張力が最も短い高分子に集中して順々に切断され、容易に破断することになりました（応力集中）。これに対して、SRMでは、高分子は架橋点を自由に通り抜けることができるため、張力を分散し均一に保つことができます（応力分散）。架橋点の分子が滑車のように振舞うことから、この協調効果を滑車効果と名付けました。なお、この効果は、SRMと他の材料との組み合わせでも発現します。
宇部興産は1942年に設立（創業は1897年）し、現在では「 化成品・樹脂」「機能品・ファイン」「医薬」「建設資材」「機械・金属成形」「エネルギー・環境」の6事業を展開しています。
「機能品・ファイン」では、耐熱樹脂のポリイミド、リチウムイオン二次電池材料、ファインケミカルや航空宇宙材料など最先端の事業をグローバルな市場で拡大しています。
| 社名 | 宇部興産株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役社長 竹下 道夫 |
| 所在地 | 〒105-8449 東京都港区芝浦1-2-1 シーバンスN館 |
| URL | https://www.ube.co.jp/ube/jp/  |
| 設立 | 1942年3月 |
ASM社はSRMの事業化を目的として2005年に設立され、東京大学及び東京大学TLOからSRMの包括的基本特許の専用実施権を得て製品設計、市場開発、製法開発を進めています。
| 社名 | アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役社長 原 豊 |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学アントレプレナープラザ301 |
| URL | http://www.asmi.jp/ |
| 設立 | 2005年3月 |
