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石炭からポリエステル原料を製造する技術を中国企業に供与

2011年2月17日

宇部興産株式会社(本社:山口県宇部市、代表取締役社長:竹下道夫)とハイケム株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:高潮)は、石炭ガス化で得られる合成ガス(CO(一酸化炭素)/H2(水素)の混合ガス)をポリエステル原料に変換する技術を、中国・黔希煤化工投資有限公司(中国貴州省、董事長:常国振。以下「黔希社」)へライセンス供与する。

今回供与するのは、DMO(蓚酸ジメチル)を製造する技術(DMOプロセス)と、DMOを還元してポリエステル原料のMEG(エチレングリコール)を製造する技術(MEGプロセス)*1で、環境負荷が低くクリーンで経済性の高いMEG工業化プロセスである。

現在、MEGは原油の随伴ガスからのエタンベースで製造、またはナフサからのエチレンベースで製造されているが、石炭由来のCO/H2からMEGを工業的に製造する技術を実用化するのは世界初となる。

黔希社は今回の供与技術に基づき、貴州省に石炭ガス化設備とMEG30万トン(DMO72万トン)の製造設備を建設し、2012年末から2013年初頭に稼動開始する予定。

中国のMEG需要はポリエステル繊維、PET樹脂向けに年率10~15%で急増しているが、ナフサベースの国内生産量は限定的な数量に留まっており、大部分を輸入に頼っている状況である。

中国では資源として膨大な量を保有する石炭を、燃料ではなく化学原料として利用し、高付加価値化と環境対応を達成することを国家石化振興計画の一部として推進しており、中国内MEGメーカーからはMEGプロセスの競争力、環境・エネルギーへの貢献度が注目されている。

宇部興産とハイケムは、他の中国企業数社ともこの技術供与の交渉を進めており、今後2~3年以内に数百万トン規模のライセンス契約を締結し、数十億円のライセンスロイヤルティを見込む。

DMOプロセスは、宇部興産独自のPd(パラジウム)触媒を用いたCOのカップリング反応によるもので、高い安全性と生産性を誇る。MEGプロセスは、宇部興産の保有技術を基にハイケム社主導によるパイロット実証試験を中国で実施し、スケールアップに対応可能な工業的製法を確立した。

宇部興産はCOを原料に化学製品を製造するC1ケミカルで世界をリードしており、石炭や天然ガス利用の選択肢を広げると共に温暖化ガスや廃棄物の排出低減に貢献する技術展開を進めている。リチウムイオン電池用電解液の主要成分であるDMC(炭酸ジメチル)等を自社工場で製造し、電解液事業では世界トップポジションにある。今回の中国へのポリエステル原料生産の技術供与を契機にDMC(電解液、軽油添加剤、溶剤用途)やオキサミド(緩効性肥料用途)についても連携を模索し、中国拠点を活用したバルクケミカル事業拡大を検討していく考え。

*1
石炭からのMEG製造方法
CO(一酸化炭素)、H 2(水素)、O 2(酸素)からMEGと水が生成する。DMOプロセスでは宇部興産独自のナイトライト技術により、高選択的にC-C結合が形成されDMOが製造される。MEGプロセスでは、DMOの水添によりメタノールが副生するがDMOプロセスでリサイクル使用される。全体的に高選択率で副生成物が少なく、非常に効率的でクリーンなプロセス。
石炭からのMEG製造方法

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