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印刷有機集積回路に適用可能なN型有機半導体のサンプルを山形大ベンチャーから販売開始

2017年2月14日

宇部興産株式会社(社長:山本謙、以下「宇部興産」)は、山形大学有機エレクトロニクス研究センターの時任静士卓越研究教授のグループと共同で開発した、有機溶媒に溶ける新しいN型有機半導体*1 材料に関して、山形大学発のベンチャーである株式会社フューチャーインク(社長:時任静士、以下「フューチャーインク」)とライセンス契約を結ぶことで合意しました。フューチャーインクは2017年4月をめどにN型有機半導体の有償販売を開始します。広くサンプル販売することで、IoT(Internet of Things)やウェアラブルセンシングで注目されるセンサーやRF-IDタグ、ディスプレイなどの電子デバイスを、設備コストが安く、フレキシブルな部材にも適用可能な印刷法で製造する技術の実用化が大きく前進します。
販売開始するN型有機半導体は、空気中で長時間にわたって安定しており、かつ溶液からの製膜が可能で、トランジスタに使用した際に、電子移動度*2 が3cm2/Vsを超えるという、実用性の高い特長を有しています。現在、このような高安定性と高特性を兼ね備えるN型有機半導体は一般に市販されていません。

有機デバイス開発の流れ

販売開始するN型有機半導体を用いた有機集積回路の試作と機能実証に関する成果は、山形大学有機エレクトロニクス研究センター時任研究室、東京大学大学院新領域創成科学研究科竹谷研究室、産業総合技術研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センターから、展示会、応用物理学会、論文誌などで発表されています。いずれもセンサーやタグなど、実用的な有機デバイスにつながる成果が得られています。今回の販売を機に有機デバイス開発をより広いユーザーに検討していただくことで、実用化への流れを一層加速します。

背景と経緯

既存のN型有機半導体材料は、P型有機半導体材料に比べてトランジスタ特性が劣っていましたが、販売開始するN型有機半導体の特性は既存のP型有機半導体材料と同程度の特性を持ち、P型とN型を組み合わせた相補型集積回路の印刷プロセス・有機デバイスが実現に向けて大きく前進しました。相補型集積回路はデバイスの省電力化と小型化には必須の技術であり、またこの相補型集積回路を高度に集積することで、IoT(Internet of Things)やウェアラブルセンシングで注目されるセンサーやRF-IDタグ、ディスプレイなどの電子デバイスを製造することが可能です。

今後の予定

フューチャーインクからのN型有機半導体の販売開始は、2017年4月を予定しています。
また、本件、N型有機半導体の販売開始については、2月15日から東京ビッグサイトで開催される「プリンタブルエレクトロニクス2017」のフューチャーインクのブース、および3月9日に山形県米沢市で開催される「高分子学会有機エレクトロニクス研究会 第6回異業種交流会」でも発表いたします。なお、実用的有機デバイスへの応用検討の最新の成果については、3月14日からパシフィコ横浜で開催される「第64回応用物理学会春季学術講演会」にて発表を予定しています。

株式会社フューチャーインクについて

プリンテッドエレクトロニクス技術を事業展開するベンチャーとして2016年4月に設立。

株式会社フューチャーインク

株式会社フューチャーインクHP:http://www.futureink.co.jp/新しいウィンドウで開きます

用語解説

*1 N型有機半導体

従来のシリコンなどの無機物と違い、有機化合物でできた半導体。N型半導体中では負の電荷(電子)が移動することで電流が流れる。対するP型半導体には正の電荷(正孔、ホール)を流すことができ、2つを組み合わせることでさまざまなデバイスを製造できる。

*2 電子移動度

半導体中での電子の移動のしやすさを示す量で、数値が大きい程、信号を速く切り替えることができ高性能。たとえば液晶ディスプレイの場合、電子移動度の高い半導体を使用したほうが動きを滑らかに表現することができる。従来のN型有機半導体では1-2.5cm2/Vs程度までの報告例がある。一般的な液晶ディスプレイなどに使われるアモルファスシリコンの移動度は0.5-1cm2/Vs程度である。

お問い合わせ先

ニュースリリースについてのお問い合わせ
  • 宇部興産株式会社 有機機能材料研究所
  • TEL:0436-23-5163
  • 株式会社フューチャーインク
  • TEL:090-7800-4472