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AN1368

走査型プローブ顕微鏡法(SPM:Scanning Probe Microscopy)

1. 特徴

金属、半導体などの導体から酸化物、有機物などの絶縁体まで幅広い試料において、表面形状および各種特性の測定が可能です。通常の大気中測定に加え、グローブボックスを用いた大気フリー測定も可能です。また、液中での測定も可能です。

2. 原理、概略図

  1. 微小な探針(プローブ)を試料表面上で接触あるいは非接触で走査させることにより、ナノオー ダーの分解能で表面微細構造(凹凸など)に関する情報が得られます。
  2. 探針(プローブ)の種類、測定モードなどを選ぶことにより、表面微細構造特性だけでなく、ナノスケール領域における様々な機械特性(位相、弾性率、吸着力など)や物性情報(磁気力、電気力、表面電位など)をイメージングできます。

3. 主な性能

ブルカー社製     MultiMode8(NanoScope V)

分解能 垂直方向0.2nm 程度
測定範囲 水平方向125×125μm(最大)
測定方法
  • 形状測定、機械特性、導電特性
  • 磁気力、電気力、表面電位などのイメージング測定
  • ナノインデンテーション測定
  • 他に、水分や酸素を嫌う試料については、グローブボックス内での測定も可能です。

4. 試料の形状、サイズ

形状 固体
サイズ 15mmφ(or 10mm□)×6mmt以下

5. 分析依頼時の留意点

  • 試料取扱いの際、試料表面の汚れの付着などにご注意願います。
  • 測定表面の最大高低差が2〜3μm程度以下であること。
    (測定領域内に数μm以上の高低差があると、プローブが試料表面形状を追従し難くなります。)
  • 測定表面に電気的チャージが溜まりやすい試料につきましては、帯電によるノイズが発現する可能性があります。静電気除去操作を行いますが、試料によっては除去しきれない場合があります。

6. 測定データ例

1) 表面形状測定

表面形状測定

測定データを元に、表面の粗さを計算した結果を示します。粗さには平均面粗さ(Ra)・二乗平均面粗さ(Rq)・最大高低差(Rmax)などがあり、面の凹凸の具合を試料間で定量比較するときの指標として有効です。また、任意の断面箇所での形状をグラフ化し、任意の2点間の距離や高低差を計測できます。

2) 機械特性イメージング

機械特性イメージング

弾性率、吸着力の違いをそれぞれ個別にイメージングし、相構造の測定ができます。特に、有機複合材料である樹脂やゴムのようなハードセグメント・ソフトセグメントのある相分離構造観察などに有効です。

3) 導電特性イメージング

表面形状には表れ難い導電性物質の分布状態などをイメージングします。複合材料中でのカーボン微粒子やCNT、更に電池電極材料などにおける導電性物質の分布状態観察などに有効です。

更に、機械特性イメージングとの同時測定も可能で、特に電池電極材料などにおけるバインダーや導電性物質の分布状態観察などに有効です。

4) その他の測定法(磁気力顕微鏡、電気力顕微鏡、表面電位顕微鏡、ナノインデンテーションなど)

その他の測定法(磁気力顕微鏡、電気力顕微鏡、表面電位顕微鏡、ナノインデンテーションなど)

磁気力顕微鏡:漏洩磁界を明暗でイメージングすることにより、磁界方向・磁気勾配などの観察が行えます。ハードディスクなど磁性体材料の解析に有効です。

7. 適用例

  1. 金属材料、半導体材料、セラミックス材料、有機材料、複合材料などの表面形状の分析
  2. 有機複合材料、ポリマーアロイなどの相分離構造のイメージング(弾性率像、吸着力像など)
  3. カーボン微粒子、CNT、燃料電池・LiB電池電極材料などの導電特性のイメージング
  4. 磁性体材料(ハードディスク、磁気テープ、磁石など)の磁区のイメージング
  5. 半導体材料、多層膜界面などでの電位差のイメージング

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