HOME > 分析対象 > 材料 > 高分子材料
C016

誘導体化および13C-NMRによるポリブタジエンの長鎖分岐解析

ポリブタジエン(PB)は、弾性、耐摩耗性、低温特性に優れる合成ゴムであり、主にタイヤ用途として広く普及しています。PBの物性はミクロ構造に大きく依存するため、ミクロ構造を制御することで、所望の物性を得ることが出来ます。特に近年では、低燃費性と長鎖分岐末端濃度との間に強い相関があることが分かってきたため、長鎖分岐点の直接的な検出と高精度な定量の必要性が高まっています。しかしながら、これまでの長鎖分岐点の評価方法はGPC-MALLSやレオロジーなどの間接的な検出法に限定されており、直接的な検出方法および高精度な定量方法はこれまで存在していませんでした。
そこで、我々はポリマーの構造解析に強力な威力を発揮するNMR法を中心としたPBの長鎖分岐点の直接的な検出法および高精度な定量法の開発を行いました。図1に直接観測の結果を示します。

水素化PBの13C-NMR・DEPT90°スペクトル

図1:水素化PBの13C-NMR・DEPT90°スペクトル

PBの分析では複雑なNMRスペクトルしか得られないため、単純なスペクトルが得られるポリエチレンにPBを誘導体化(水素化)しました。続いて13C-NMRおよびDEPT測定を駆使することで、世界で初めて長鎖分岐構造を捉えることに成功しました*1。これらのスペクトルから長鎖分岐点数は、1,000カーボンあたり0.27個であると定量できました。

  • *1 Y. Ishii, M. Kida, T. Gogota, Y. Maru, K. Miyauchi, Polymer 185(2019)121965.
前のページに戻るこのページのトップへ