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M203

GaN反転ドメイン境界の構造解析

GaNはc軸方向に反転対称性を欠いており、図1(a)に示すようにc面にはGa極性面とN極性面が存在します。両者の境界は反転ドメイン境界と呼ばれ、その構造により安定性や電気的活性が異なるという報告があり*1、構造を確認することは重要と考えられます。

図1(b)に断面TEM写真を示します。図中の分析点1〜4に対応するCBEDパターン(技術資料「収束電子線回折像シミュレーションプログラム」参照) を図1(c)〜(f)に、計算パターンを図1(g)、(h)に示します。計算したCBEDパターンとの比較から、断面TEM写真中に示すようにN極性の反転ドメイン(分析点2、3)が、また矢印の位置に反転ドメイン境界が存在することが分かります。

図1:(a)GaN極性モデル、(b)断面TEM写真と分析位置、(c)-(f)CBEDパターン、(g)(h)CBED計算パターン

図1:(a)GaN極性モデル、(b)断面TEM写真と分析位置、(c)-(f)CBEDパターン、(g)(h)CBED計算パターン

次に、反転ドメイン境界を拡大したHAADF-STEM像を図2(a)に、ABF-STEM像を図2(b)に示します。HAADF-STEM像を緑、像強度を反転させたABF-STEMを赤として重ねあわせた像(図2(c))において、Ga原子列が黄色にN原子列位置が赤に観察されると期待されます。この反転ドメイン境界を解析した結果、エネルギー的に安定で電気的に不活性なIDBタイプ*1が観察方向にシフトして2つ重なっていると解釈できました(図2(d))*2。このモデルを用いた計算像 (図2(c)中)は実験像を良く再現しており、モデルは妥当と考えられます。

図2:(a)HAADF-STEM、(b)ABF-STEM、(c)合成像・計算像、(d)反転ドメインモデル

図2:(a)HAADF-STEM、(b)ABF-STEM、(c)合成像・計算像、(d)反転ドメインモデル

*1 G. P. Dimitrakopulos et al., Phys. Rev. B 64, 245325 (2001).

*2 Matsubara et al., Micron. 94, 9 (2017).

(サンプル:山口大学 只友一行教授ご提供)

   

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