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M224

多変量解析法を用いた化学状態分布の評価

多変量解析法を用いることで、データを要約し、解釈しやすい形で情報を抽出することが可能です。以下には、市販白色LED中のGaN/sapphire接合界面について、化学状態分布を評価した事例を示します。

電子顕微鏡を用いた分析法の1つに、スペクトルイメージング(SI)があります。ここでは、試料上を電子線が二次元的に走査しながら、試料位置に対応したスペクトルを収集します。典型的なSIデータは、位置座標(x, y)とスペクトルエネルギーEを変数として持つ三次元構造(データキューブ)を有します(図1)。この中には膨大なデータが含まれますが、多変量解析法を用いることで、データを要約し、解釈しやすい形で情報を抽出することが可能です。
図1:SIのデータ構造

GaN/sapphire接合界面について、走査透過電子顕微鏡(STEM)- 電子エネルギー損失分光(EELS)測定を行い、SIデータを取得しました。このデータに対し多変量解析の一種である主成分分析を行うと、視野内の特徴的なスペクトル(主成分スペクトル)を軸として、各座標のスペクトルの特徴を視覚化することが可能です(図2(a))。このプロットでは、1つの黒点は1座標のスペクトルに対応しており、黒点は一定の分布を持つことが確認できます。そこで、分布の端点を端成分(endmember)と定義すると、そのスペクトル(図2(b))や空間的分布(図2(c))が得られます。このうち、端成分#3については、N-K端スペクトルの形状から分子状N2を含むと推察され、界面付近のsapphire中に存在する可能性が示唆されます(技術資料S382)。

図2:(a)主成分スコアプロット (b)端成分スペクトル (c)端成分の空間的分布
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