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S370

クラスター型一次イオンを用いた有機顔料の分析

飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いると、試料表面に存在する物質の元素情報だけでなく、化学的な構造情報を高感度かつ高分解能で得ることができますが、従来の元素イオン(Ga+、Cs+など)を一次イオン源に用いた場合には、高質量領域の高感度分析が困難でした。近年、クラスター型一次イオン源が開発されたことにより、高質量領域の高感度分析が可能になりました。以下に、イオン源の違いによる比較例を示します。

一次イオンに27kV Au3+または12kV Ga+を用いた場合のジスアゾ系顔料(Pigment Yellow 17)のTOF-SIMS分析結果を図1に示します。一次イオンにAu3+、Ga+のいずれを用いた場合にも、検出されるフラグメントイオン種に顕著な差は認められません。しかし、その二次イオン強度は大きく異なり、高質量領域ほどその差は顕著です。特に、Au3+を用いた場合に、分子イオン(m/z 688C34H30Cl2N6O6)の二次イオン強度は、Ga+を用いた場合に比べて二桁以上の感度向上が認められました。以上のように、クラスター型一次イオンを用いたTOF-SIMS分析により、更に高感度な質量分析が可能になり、TOF-SIMSの応用分野が広がりました。

図1:(上)一次イオン27kV Au3+/(下)一次イオン12kV Ga+

図1:Pigment Yellow 17のTOF-SIMS分析結果(上:一次イオン27kV Au3/下:一次イオン12kV Ga

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