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S379

透過型電子顕微鏡試料作製方法

透過型電子顕微(TEM)は、オングストロームという高い空間分解能で観察し、微小領域の構成元素を分析する装置で、最近のナノ材料の解析には必須の分析装置です。TEM測定する際大事なことは、試料を電子線が透過する厚み(約100nm)に薄くすることです。様々な試料作製方法があり、材料によりまた測定目的により変化しますが、最も重要なことは可能な限りオリジナルの情報を保つことです。私共で主に行っている、分散法、ミクロトーム法、Arミリング法、FIB(Focused Ion Beam)法について、その特長を以下に説明します。

  • 分散法:
    試料をそのままの状態であるいは粉砕した後、溶媒中に分散し、分散液をマイクログリッドに滴下します。グリッドにはカーボン支持膜が有る無しの2種類があり、どちらを選択するかは分析内容により決定されます。
  • ミクロトーム法:
    ダイヤモンドナイフを用いて、試料を薄く切断し、100nm前後の薄片を作製する。柔らかい試料(例えばポリマー)は液体窒素で冷却します。染色方法との併用も可能ですが、適用できる材料はある程度制限を受けます。
  • Arミリング法:
    バルク試料や基板を有する試料を、まず機械的に加工し厚みを数10μmまで薄くし、最後にAr+イオンを照射することにより、試料中の結合を切断しながら薄片化します。照射ダメージはArイオンのエネルギーに依存します。
  • FIB法法:
    SIM(Scanning Ion Microscopy)やSEM(Scanning Electron Microscopy)で観察しながら、目的箇所にGa+イオンを照射し薄片化します。Arイオンに比べるとダメージは非常に大きいですが、GaイオンダメージをArイオン照射で除去することも可能です。
    ルギーに依存します。
表:分散法、ミクロトーム法、Arミリング法、FIB法の比較
試料作製方法 適用材料 利点 欠点
分散法 ・微粒子
・触媒中の金属粒子
・カーボン材料(CNT)
・短時間に試料調整
・ダメージフリー (粉砕なしの場合)
・粉砕すると機械的ダメージが 試料に混入
・支持膜の情報が混入
ミクロトーム法 ・ポリマー
・金属
・ポリマー複合材料
・ポリマーに最適
・染色技術を併用
・広範囲を薄片化
・機械的ダメージ
・適用材料に制限有り
・数nmの薄片化不可
Arミリング法 ・セラミックス
・金属複合材料
・各種膜/基板材料
・照射ダメージ小さい
・厚み数nmの薄片化
・GaN、GaAsに有効
・水・溶媒と接触する
・均一な薄片化困難
・広範囲の薄片化不可
FIB法 ・表示材料(液晶,EL)
・Si半導体、LD、LED
・各種膜/基板材料
・微小領域の薄片化
・機械的ダメージ無し
・水・溶媒と接触なし
・照射ダメージ大きい
・広範囲の薄片化不可
・局所的に温度が上昇
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