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X151

高分子表面の分子鎖配向性評価(3)

1. 概要

図1:MODEL:PP film and Crystal Structure, the molecular chains orient preferably in the direction of TD

図1:MODEL: PP film and crystal structure, the molecular chains orient preferably in the direction of TD.

高分子の表面は、バルクとは異なった独特な構造を有しており、接着・濡れ・吸着などの機能特性と密接に関連している。これらの機能発現には、一次構造だけでなく高次構造まで理解することが不可欠である。

これまで我々は、ポリプロピレン(PP)フィルム表面の分子配向と結晶構造に着目し、斜入射X線回折(GIXD)法を用いて研究を進めてきた。図1に我々が構築したモデルを示す。

本研究では、加熱延伸処理後のPP分子鎖の挙動について調べるため、GIXD法を用いて試料面内回転強度分布図(Pφスキャンプロファイル)の時間変化を観測した。そして、図1のモデルを発展させ、単斜晶系マルチドメイン構造を仮定することにより、分子鎖の挙動を説明した。

2. 実験

2. 1 試料 ロール状PPフィルム
2. 2 装置 株式会社リガク製 ATX-G 型 表面構造評価用多機能X線回折装置

2. 結果

図2に、TD方向と平行な方向からX線を入射したときの、(110)回折面でのφスキャンプロファイルの観測結果を示す。未処理(青)のPPフィルムに、2時間加熱(100℃)延伸処理を行った直後(赤)、24時間後(緑)、120時間後(水色)の測定結果を重ねて示した。TD方向におけるピーク位置は、加熱延伸により−10°方向へシフトした。MD方向におけるピーク位置は、加熱延伸直後は+10°方向へシフトし、さらにその後、未処理のピーク位置を越えて−10°方向へシフトしていった。

MD方向における回折強度の特異な振る舞いを説明するため、b軸がフィルム表面に対して上下反対向きである単斜晶系マルチドメイン構造(図3参照)を仮定した。PPはβが約100°の単斜晶系であるため、反対向きドメイン間での(110)回折面のなす角度は20°となる。加熱延伸処理後、このようなドメイン間の移り変わりが起こったとすると、φスキャンプロファイルにおけるピーク位置が−10°から+10°まで計20°シフトしたことを、矛盾無く説明できる。

図2:GIXD (110) φ-scan profiles by the heating extension processing of PP film about incident direction, TD.

図3:A conception diagram of the multi-domain structure. The b-axis faces the diagram at the upper half domain, and jumps out at the lower.

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