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Z001

定量NMRの標準物質

定量NMRによる純度の分析

定量NMR(qNMR)は、NMRスペクトル上の定量用基準物質と分析サンプルの積分値を比較することで分析サンプルの定量値を得る測定法です。NMRスペクトル上の各信号から、下式により純度を算出することが出来ます。


内標準法と外標準法

内標準法では、標準物質と分析試料を混合した試料溶液を用意し、測定を行います。得られたスペクトル内で標準物質と分析対象成分の信号面積を比較して定量値を求めます。
外標準法は、標準溶液と分析試料を別々に比較して定量値を求めます。測定の精確性は、内標準法の方が高いと言われています。一方、外標準法は、試料溶液に標準物質を添加する必要がないので、分析試料を回収できるというメリットがあります。

qNMRの標準物質

qNMRに用いる標準物質には以下の要件が求められます。

  1. 高純度であること
  2. 精密にはかり取りができること
  3. 信号の分裂が少ないこと
  4. 溶媒中で安定なこと
  5. 溶媒への溶解性が良好であること

1.2.に関連することですが、qNMRではトレーサビリティーの確保のため、正確な純度が付与された標準物質が必要となります。さまざまな化合物がqNMR用に値付けされ、メーカーより市販されています。不安定や吸湿性の高いものがあるため、使用時にはその性状をよく理解して取り扱う必要があります。さらに、内標準法では、標準物質の信号と分析対象物質の信号が重ならないよう、特異的な領域に化学シフトを与えることが求められます。5.の溶解性と合わせて下表が参考になります。

標準物質 1H化学シフト 溶媒への溶解性
Acetone-d6 CDCl3 D2O DMSO-d6 CD3OD
1,4-BTMSB-d4w 0.2 ppm ×
DSS-d6 0.1 ppm × ×
ジメチルスルホン 3.2 ppm
マレイン酸 6.2 ppm ×

表1:標準物質の化学シフト、重溶媒への溶解性

一例として、下記に内標準法によるサリシンのqNMRの結果を示します。サリシンは、水、アルコールへの溶解性は高いものの、クロロホルムへの溶解性はほとんどありません。そのため、重メタノール(CD3OD)をNMR測定の重溶媒に選びました。また、1H NMRを測定すると、0 ppm近傍、5.0〜7.0 ppmの範囲に信号が観測されませんでした。そこで、マレイン酸を標準物質として使用しました。サリシンとマレイン酸を天秤で精確に秤量し、CD3ODに溶解し、qNMRを行いました。得られた測定値と式1から、サリシンの純度は98.4%と算出されました。

図1:サリシンの純度測定(qNMR条件)

図1:サリシンの純度測定(qNMR条件)

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