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O510

質量分析手法MSEの利点

LC/MS測定では一般的にESIやAPCIといったソフトなイオン化法が使用されるため、フラグメントイオンが生じにくく、得られる情報は分子量関連イオンの推定に留まります。更に構造解析に有用なデータを得るためには、MS/MS測定を行う必要があります。

簡便にMS/MSを行える手法として、Waters社製のMSEがあります。MSEは煩雑な条件設定をすること無く、自動でMS/MSデータを取得できる(コリジョンエネルギーを加える)手法です。シンプルかつ網羅的方法論で複雑なサンプルの中から多くの情報を得ることが可能になります。多成分のクロマトで網羅的な解析をする際にはMSEが大変有効です。

以下に、従来のMS/MS(プロダクトイオンスキャン)(図1)及びMSE(図2)について説明します。

図1:MS/MS測定のしくみ

図1:MS/MS測定のしくみ

1つ目の質量分離部(MS1)で特定のイオンを選択し、コリジョンセルでフラグメンテーションを起こさせた後に、2つ目の質量分離部(MS2)で生じたフラグメントイオンを検出します。指定した化合物の解析には有効ですが、データ依存的なため網羅的な解析には不向きです。

図2:MSEのしくみ

図2:MSEのしくみ

1つ目の質量分離部(MS1)を通過した全てのイオンは、コリジョンセルでフラグメンテーションを起こします。生じた全てのフラグメントイオンを2つ目の質量分離部(MS2)で検出します。データ非依存的であり、一度の測定で網羅的なデータを取得することができます。

多成分含む試料も、保持時間によって全てのフラグメントイオンと関連付けられ、プレカーサーイオンの特定も可能となります。またスルホン酸化合物等、特徴的なフラグメントイオンが生じる化合物の検出に有効です(技術資料「MSEを用いたスルホン酸化合物の分析」参照)。

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