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P331

微小領域の動的粘弾性測定 ミクロとマクロの比較

複合材料中の高分子成分の物性を評価する上で、重要な測定手法の一つに動的粘弾性測定がある。一般的な動的粘弾性測定(DMA)では、複合材料中の各高分子成分の物性をそれぞれ評価することは不可能である。複合材料中の各高分子成分の物性をそれぞれ評価するには、ナノインデンテーション法が有効である。この手法は、鋭く尖った圧子を試料に押込み、荷重と変位の情報から弾性率・硬さを評価する。その際、圧子に動的な振動を与えることで、試料の局所的な動的粘弾性測定が可能となる(nanoDMA)。実施例として、炭素繊維強化プラスチック(母材;エポキシ樹脂)をDMAとnanoDMAで評価した。DMAは試料片を三点曲げで、nanoDMAは試験片の断面加工を行い、エポキシ樹脂を狙って測定した。その結果を図1に示す。貯蔵弾性率に着目すると、DMAでは炭素繊維を含んだ強化プラスチック全体の物性情報となるのに対し、nanoDMAではエポキシ樹脂の情報が取得できた。この事から、nanoDMAは複合材料中の高分子成分の物性を評価するのに有効な手法であることが確認された。

図1:PPの弾性率と複素粘性率の周波数依存性(重ね書き)

図1 炭素繊維強化プラスチックのE’,E”,tanδ(周波数依存性)
※DMAでは、高周波数(70,100Hz)の位相角(位相のずれ)が小さいため、E”とtanδのデータが無い

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