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P344

ナノインデンターによる薄膜や微小領域の応力-ひずみ曲線の評価

図1:S-Sカーブの模式図

最も基本的な材料試験に引張試験があります。この試験で得られる応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)に関して、カーブ初期は直線(弾性変形)で、比例限度以上において直線から外れ、応力が極大値を示す弾性限度(上降伏応力)を境に応力は下降に転じます。上降伏応力を超えると材料は塑性変形を示し、応力がさらに大きくなるとついには破断します(図1)。そのため、比例限度や弾性限度は材料強度の一つの指標と言えます。

引張試験はダンベル状の試験片が必要であり、基板上のコーティング薄膜や微小領域には適応できません。ナノインデンターは薄膜や微小領域の力学物性を評価できます。ただし、一般的な三角錐形圧子を用いたナノインデンテーション法では弾性率や硬さの評価は可能ですが、荷重変位曲線の初期から塑性変形が含まれるため、強度は評価できません。しかし、球形圧子を用いる事で、荷重変位曲線の初期に弾性変形が観測されるので、比例限度が評価できます。

各樹脂(ポリスチレン,ポリアミド,ポリエチレン)を球形圧子によるナノインデンテーション法で測定して、得られた荷重変位曲線をS-Sカーブに変換する事で、比例限度が評価できました(図2)。

図2:各樹脂の荷重変位曲線
S-Sカーブ

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